ユア・フレンド・ザ・ラット (11分) / レミーのおいしいレストラン より Your Friend the Rat
2007年 外国映画 4ツ星 主人公は動物 教養 歴史 短編映画 @ピクサーやりすぎ、たまらない。
『レミーのおいしいレストラン』は、けっこうな問題作だった。能力があれば、ネズミの料理人が認められていいじゃないか。多様性や差別撤廃を謳う人たちは、本作に賛同するんだろうか? 考えさせる映画だった。
本作はそのスピンオフ。「ネズミは思ってるほど不潔じゃないよ」「共生できるよ」というメッセージを伝えているのだが、そのフォーマットは原発プロパガンダ番組『Our Friend the Atom』(1957)だ。
我が友 原子力 / Our Friend the Atom
『Our Friend the Atom』は、核の平和利用(Atoms For Peace)を訴求するプロパガンダ映画。「第五福竜丸事件」(1954年)をきっかけに、日本で激しい反核運動が起こった。これに危機感を覚えたアメリカ政府は、ウォルト・ディズニーに番組制作を依頼した。1958年元旦に日本テレビで放送された。放映は大成功を収め、日本各地で原子力発電所建設が進んだ。
ウォルト・ディズニー自身がホストを務めた。原子力をランプの魔人になぞらえ、その仕組みをわかりやすく解説。原子力は明るい未来のエネルギーとして紹介され、その危険性や厄介な問題はほとんど触れていない。
むろんピクサーはネズミの権利を訴えたいわけじゃない。ネズミに料理を作れるはずないし、作れたとしても任せるわけにはいかない。映画も、この短編も、ジョークだ。真に受けて「ネズミは友だち」と言っちゃう人は、プロパガンダに弱い。
本作は日本未公開である。プロパガンダを真に受けちゃった日本としては、ややこしい物議を醸すことになる。そもそもネズミの権利を訴えたいわけじゃないから、公開するメリットがない。
こうした背景を踏まえると、『レミーのおいしいレストラン』はやはり問題作だったと思う。
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