エージェント・カーター (全8話) Marvel's Agent Carter

2015年 海外ドラマ 5ツ星 SF スパイ @マーベル・コミック

ヒーロー、去りしのち

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)の後日談で、女性エージェントのペギー・カーターが主役。驚くべきは、彼女に特殊能力がないこと。いくつかSF要素はあるが、カーターは知恵と技術と勇気で難局を乗り越えていく。つまりスパイアクションとして成立している。そこに落胆する人もいるだろうが、私は楽しめた。というか、完成度がめちゃくちゃ高いよ。

  • 善良だが、功名心もあるペギー・カーター。
  • 知性の暴走を悪びれないハワード・スターク。
  • 意表ついて有能な執事エドウィン・ジャーヴィス。
  • カーターをいびる支局長ドゥーリーと、同僚トンプソン。
  • 親切なところが妙に気にかかる傷痍軍人の同僚スーザ。
  • 共感できる友人アンジー。

前半でキャラクターの個性が描かれるが、後半で内面が明かされたときのショックが大きい。みんな記号じゃなくて、生きた人間として罪の呵責や葛藤を抱えている。最終話でカーターがスタークを説得するシーンは心に沁みた。
しかもキャラクター描写が、ストーリーの展開を阻害していない。これほどキャラクターに思い入れがあれば、じっくり描いて冗長になりがちなのに、きっちり制御されている。じつに巧みだ。

そして本作もう1人の主人公であるジャーヴィスがいいね。なにかしらの能力者と思っていたが、定時勤務の朴訥な人物だった。しかし内面に秘めた誠実さが、いくどもカーターの窮地を救う。拳銃や格闘技の達人だけが、有能とはかぎらないのだ。老いたジャーヴィスと幼いトニー・スタークの会話を見てみたい。

あらすじ(ネタバレ:個人的な理解による)

ハワード・スタークが発明したミッドナイト・オイルによって地獄を見たイフチェンコ博士は、復讐のため、秘密結社リヴァイアサンを組織した。女スパイのアンダーウッドを使ってスタークの発明品を盗み出すと、その一部をブラックマーケットに流した。

武器密売の容疑をかけられたスタークは、逃亡者となった。賊の目当ては《スティーブ・ロジャースの血液サンプル》と考えたスタークは、秘密裏に回収すべく、旧友のペギー・カーターに依頼し、執事のエドウィン・ジャービスに監督させた。

カーターは旧友のため、市民を守るため、そして功名心のため活動し、発明品を取り戻すが、大局のため、自分の手柄であることは伏せた。しかし発明品に血液サンプルが含まれていたことに激怒し、スタークとジャーヴィスと袂を分かつ。
その後、ベラルーシの軍事基地を襲撃してイフチェンコ博士を救出する。リヴァイアサンの目的がわからない。

SSRに潜入したイフチェンコ博士は、ミッドナイト・オイルを奪取。映画館で実験したのち、ハワードを拉致して、催眠をかけ、スターク自身にニューヨークを壊滅させようとする。突入したSSRがイフチェンコ博士を逮捕。カーターはスタークを説得し、危機は回避された。

事件解決後、カーターは血液をイーストリバーに捨てる。カーターは表立って表彰されることはなかったが、信頼できる仲間を得て、満足していた。しかしアンダーウッドは逃走し、イフチェンコ博士に接近する影があった。エージェントたちに休息の日々はない。

冷静に考えると、催眠博士がハワード・スタークに会いさえすれば最終回に突入できるので、こんな遠回りした理由がわからない。スタークの信用を失墜させることも、催眠があれば自在だったはず。催眠博士がベラルーシで動けなかったのなら、そう説明してほしかった。
また《血液サンプル》は飛び抜けて注目されるアイテムだから、リヴァイアサンの目的が「ミッドナイト・オイル」とわかると落胆してしまった。やはり《血液サンプル》を利用した方法で復讐してほしかった。序盤で製油所を消滅させた「ニトラミン爆弾」でも用は足りるだろう。

リヴァイアサンの全貌を、私は前述のように理解したが、なにか見落としがあったかな? こうした細かいところが気になるのは、本作のクオリティが高いあかしだ。この世界観でもっとカーターの活躍を見たい。

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