三の兆候 / SHERLOCK シャーロック(S3E2) SHERLOCK - The Sign of Three

2014年 海外ドラマ 5ツ星 #シャーロック・ホームズ

「いや、新しい時代がはじまるんだ」

初見の感想

『ベルグレービアの醜聞』の経験から、冒頭でレストレード警部が追っていたウォーターズ一味が重大な意味をもつと思っていたが、スカされた。やられた。
結婚式のスピーチを通して2つの事件を語り、しかも真相が明かされないまま進むことに驚くが、1つの気づきで、いまから起こる殺人を食い止めるという展開は白眉だった。ショルトー少佐にジョナサン・スモールか。うまいこと考えたなと感心した。
ドアを開けたショルトーが「医師に見てもらったほうがいいようだ」と言い、「ここにおります」と答えるジョンがかっこよかった。

2度見た感想

シャーロックは変質者:シャーロック・ホームズは心理洞察に長けた名探偵(ヒーロー)ではなく、本人も言うとおり「高機能社会不適合者(High-functioning Sociopath)」だった。ジョンに親友と呼ばれて、凍りつく。空気を読めず、決めたことを最後までやろうとする。メアリーの友人を笑顔で脅迫し、子どもに死体の写真を見せて言うことを聞かせる......。オチがないのは、オチが必要と思ってないから。人々の興味がどこに向くかより、自分が言いたいことを言ってるだけ。ユーモラスに見えるけど、本気でやばい人だった。

個性的なメアリー:そしてメアリーの機微に感心する。メアリーはいわゆる美女ではないが、男たちの友情をよく理解し、戦う男を誇る感性をもっている。唐突な登場に驚いたが、いいキャラクター。比べると、ハリウッド版『シャーロック・ホームズ』のメアリーとワトソンはきわめて浅い。ショルトー少佐と親しく話すジョンに苛立つシャーロックに、メアリーは「私もあなたも、彼の初めての人じゃないのよ(Oh, Sherlock! Neither of us were the first.)」と笑う。なかなか言えないセリフだ。
お気に入りはここ。

ショルトー少佐は自分が狙われていると知って、部屋に鍵を掛けて立てこもる。シャーロック、ジョン、メアリーは出てくるように説得するが、ショルトー少佐の決意は固い。そのとき...

Sharlto: So are you so long as you're here. Please. Leave me. Despite my reputation, I really don't approve of collateral damage.
報道とちがって、人を巻き添えにするのは嫌いでね。
Mary: Solve it.
解いて...
Sherlock: Sorry?
なに?
Mary: Solve it and he'll open the door like he said.
解けば少佐は出てくる
Sherlock: I couldn't solve it before how can I solve it now?
このまえ解けなかったのにか?
Mary: Because it matters now.
いまなら解けるわ
Sherlock: What are you talking about? What's she talking about? Get your wife under control.
なに言ってる? わけのわからないことを!
John: She's right.
いや解ける!
Sherlock: Oh. You've changed.
変わったな!
John: No, she is. Shut up. You are not a puzzle solver. You never have been. You're a drama queen. Now there is a man in there about to die. The game is on. Solve it!
変わってない!
きみに火をつけるのはパズルじゃない。ドラマなんだ!
少佐に死が迫ってる! ゲームは始まった!
謎を解け!
※drama queen=芝居がかった人。悲劇のヒロイン。

シリーズを何度も見た感想

これはシャーロックの精神が変化するエピソードであり、シーズン3フィナーレに欠かせないステップだった。親友を得て喜ぶシャーロックに、マイクロフトは「深入りするな」と警告する。結婚したジョンはふつうの人になり、シャーロックは孤独になると思ったからだ。しかしシャーロックは覚悟した上で、3人のために能力を使うと決めた。ゆえにこっそり、独りで去った。不器用だけど、かっこいい。


※マインドパレスで仮想人格に尋問する

本作において「マインドパレス(精神の宮殿)」の表現は進化する。ホールに集められた関係者たちは、シャーロックの脳内で再現された疑似人格だが、会話できる。最初は意味がわからず混乱したが、わかってみるとおもしろい。制作者も気に入ったのか、この表現は今後多用されていくが、私は本作くらいの使われ方が好きだった。

初見のときはフツーだったが、何度も見返すことで楽しくなって、評価がアップした。ほんと、うまくできてる。

シャーロック・ホームズ
-1970s
1980s
新シャーロック・ホームズ
2000s
2010s
ハリウッド版
BBC SHERLOCK
ゆっくり文庫

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