ふたり/コクリコ坂・父と子の300日戦争 ~ 宮崎 駿×宮崎吾朗 Futari

2011年 日本ドラマ 3ツ星 ドキュメンタリー @NHK @宮崎駿&ジブリ

舞台裏を売るのか

思えば、『ゲド戦記』(2006)はひどかった。なんの経験もない二世に傑作を作れるはずないが、2006年の邦画興行収入1位を稼いでしまったのは皮肉だ。ここで鈴木プロデューサーは、親子の確執が売れると確信したのだろう。「父さえいなければ、生きられると思った。」というキャッチコピーからも、その意図は伺える。

『コクリコ坂から』(2011)においては、もっと積極的に舞台裏(親子の確執)をピーアールした。父・駿氏が脚本を書いて、息子・悟朗氏が監督をするという構図もそうだ。ジブリファンなら興味をそそられるだろう。

ダメ押しで本作だ。悟朗氏は自分に才能がないことを理解した上で、監督業に挑む。父は息子を突き放しつつも、見守る。どちらもかっこいい。とりわけ駿氏の存在感は大きい。演出に行き詰まっているとき、駿氏はたった1枚のイメージカットで現場を動かしてしまった。こんなことをされちゃ、監督の立場はないね。また東日本大震災の発生時には、「生産点を止めるな!」とスタッフを叱咤した。名監督はストーリーを紡ぐセンスだけでなく、スタッフを掌握するパワーがある。悟朗氏が乗り越えようとする山は果てしなく大きい。
で、ラストのやりとりで止めを刺す。

父「少しは脅(おびや)かせって、こっちを!」
子「くそッ...死ぬなよ!」

いやぁ、盛り上げてくれますよ。しかし舞台裏がどうであれ、映画がおもしろくなるわけじゃない。その後、『コクリコ坂から』を鑑賞するが、安定の駄作で嘆息した。鈴木プロデューサーが「親子の確執」を宣伝に使わなかったら、興行成績はさらに悪かっただろう。

悟朗氏のイメージは「才能がないのに勘違いしちゃった人」だったが、本作で「二世であることを営業に利用された人」に変わった。だから可哀想というわけじゃない。監督になれないクリエイターがたくさんいる中で、悟朗氏はチャンスに恵まれたのだから。

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