シン・ウルトラマン Shin Ultraman

2ツ星

マゾが来た。

期待していたし、序盤は引き込まれた。しかし次第に疑問符が浮かび、失速してゆく。終わってみれば、差し伸べた手を拒絶された感じ。このウルトラマンは、ぼくらのウルトラマンじゃない。ぼくらを見てくれない。ぼくらの理解を求めていない。閉じている。ウルトラマンを見て、こんな拒絶感を味わったのは初めて。そういう意味では、まったく新しいウルトラマンではある。もっと見たいと思わないが。

オープニング

『ウルトラＱ』ならぬ『シン・ゴジラ』を破って『シン・ウルトラマン』爆誕！　オリジナルへのリスペクトより、庵野ユニバースの強烈なアピールに思えた。と同時に本作が『シン・ゴジラ』のようなリアル路線ではなく、ファンタジックなヒーローを描くことが暗示された。
つづいて『ウルトラＱ』の怪獣騒動が前日譚として語られる。これで興奮しない特撮ファンはいない。

ウルトラマン登場 / 科特隊出撃せよ

[あらすじ] ネロンガを止められない禍特対。そのとき銀色の巨人が飛来し、圧倒的なパワーで撃滅する。ウルトラマンは神永と入れ替わり、禍特対の一員として活動する。

[感想] 禍特対が怪獣退治の専門家に見えない。あたふたするだけで、発想も平凡。あまつさえメンバーのひとりは持ち場を離れてしまう。
ウルトラマンは、神永の自己犠牲を見て人間を好きになったと言うが、特殊な人物で、特殊な状況だった。子どもを助けたらネコでもカブトムシでも好きになるだろうか？　ウルトラマンが愛した人間のイメージは、現実から乖離している。理解できない。宇宙人だ。

ヒロイン登場 / 電光石火作戦

[あらすじ] 浅見が禍特対に配属され、神永の相棒になる。神永の正体はだれも気づいていない。浅見は神永に「助け合う心配り」を教える。ガボラ出現。ウルトラマンが撃退する。

[感想] 浅見は能力や行動の結果ではなく、最初からヒロイン属性を与えられている。理由もなく特別。選ばれしもの。アニメっぽいキャラ付け。この映画は大人向けじゃなかったのか。
浅見はスニーカーで出勤し、勤務中はヒールに履き替える。いつ出動するかわからない部署なのに？　公安出身であり、公安に戻るつもり満々。つまり人類の平和や、宇宙の理解より、出世が大事？　なぜ禍特対に出向したのか。「幼少期の体験から、ウルトラマンに神を見い出した」など特別な理由があると思ったが、語られなかった。

禍特対メンバーは机の上におもちゃを並べる。専門家らしさより、一般市民らしさを演出しているわけだが、不安感しかない。

ウルトラマンは人間を理解するのに、対話より読書を選ぶ。強烈なオタクムーブ。宇宙人か。
ウルトラマンがベーターカプセルを浅見に託したのは、浅見という人物を知って、好いて、信頼したからではない。「黙ってコーヒーをもってくることが仲間」と言われたから。これまた宇宙人か。

凶悪宇宙人・ザラブ星人 / 遊星から来た兄弟

[あらすじ] ザラブ星人がウルトラマンを拘束し、その正体を暴露した。にせウルトラマントして悪事を働き、日本政府と不平等条約を結ぼうとする。なんやかんやでザラブ星人が撃退される。

[感想] 人間・神永はどーゆー人物だったのか？　単独行動が許容され、公安の調査でも人物像がつかめない？　宇宙人より武器な存在だ。そんな人物を放置する禍特対も、ますます危うい。ウルトラマンと浅見を架け橋した男も正体不明。謎が増えてゆく。

凶悪宇宙人・ザラブ星人 / 禁じられた言葉

[あらすじ] 人類の独占管理をもくろむメフィラス星人は、ベーターボックスのデモンストレーションとして浅見を巨大化させる。日本政府の「ある男」は地球を売り渡す。ウルトラマンはメフィラス星人と戦う。メフィラス星人はゾーフィの来訪を知って、地球から手を引いた。

[感想] 浅見の巨大化はおもしろいが、リアリティは毀損された。子ども向けのサービスでもない。それじゃなにをやってるんだ？
メフィラスとウルトラマンの会話がおもしろい。素晴らしい。
「政府の男」はのちに場違いな交渉をもちかける。彼の正義によって、日本政府も信頼できなくなった。

天体制圧用最終兵器ゼットン / さらばウルトラマン

[あらすじ] ゾーフィは地球人類の滅却を決定、ゼットンを解放した。ウルトラマンは、無駄と知りつつゼットンに挑戦し、敗北した。禍特対の滝明久が人類の叡智を結集し、「ウルトラマンを犠牲にして地球を救う作戦」をウルトラマンに実行してもらう。
ウルトラマンはゼットンを撃破するが、異次元に閉じ込められた。さいわいゾーフィに救出されるが、帰還命令を拒否。ゾーフィのはからいで、神永が分離・復元された。

[感想] ぽかーん。ウルトラマンは、こうなることを予見して敗北し、眠っていたようにしか見えない。自分に対して冷淡な人類のために死ぬことが、ウルトラマンの望み？

このウルトラマンは、人類の未来を信じていない。
今のままでいい、今のままでいろと思ってる。
それでいて、仲良くなるつもりはない。
傷つくことを喜んでいる。

こわい。気持ち悪い。