レビュー  1978年09月29日  に発表された 

ナイル殺人事件 / 名探偵ポワロ (ピーター・ユスティノフ主演)
Death on the Nile

4ツ星

全員に動機と機会があった

2016年に鑑賞。スーシェ版『ナイルに死す』(2004)に比べ、格段にわかりやすい。ポワロは乗客をひとりずつ、厳しく尋問し、全員に動機と機会があったことを、イメージ映像つきで指摘する。だれにでも可能だったなら、どうやって犯人を特定するのか? 謎が明示されたことで、集中力が高まった。

ポワロがコブラに襲われるのも、いいアクセント。壁を叩いてにSOSを伝えるポワロの機転と、武装して駆けつけるレイス大佐の機敏さがかっこいい。このシーンによって、犯人が同じ船に乗っていて、ポワロの挙動を見ていることが明らかになった。たまらない緊張感。
ほか気に入ったところを挙げておく。

  • レイス大佐は弁護士の不正を知っていた
    →推理の飛躍を防ぐ。
  • ルイーズがドイルの部屋に入ってきたから、その場で尋問がはじまった。
    →ルイーズはドイルを恐喝するため訪ねた。
  • 盗まれた真珠が自主的に返納された。
    →容疑を簡略化。
  • 大佐がワインのカビに気づく。
    →睡眠薬の混入→計画的犯罪。
  • ショールを盗まれた時間を問題にしない。
  • ショールにインクが染みていると指摘。
  • ダイイングメッセージに死体の指を使う。
    →スーシェ版では犯人の指だった。
  • ドイルがジャッキーに目撃者を伝えるシーンを追加。
    →気弱なドイル、メスの入手経路が判明。
  • 犯行を裏付ける証拠がない。
    →ペテン(ムラージュ法)によって自白を引き出した。

ラストのラスト、ジャッキーの告白が衝撃的だった。サイモンが愚かな方法(ベッドにコブラを仕込む)で先走りそうだったから、ちゃんとした計画を与えた。だからサイモンは悪くないと言いたいようだ。愛する人以外の命をまったく考慮しない物言いが、じつにリアル。また殺人に慣れてしまうという告白も怖い。第3の殺人はあまりに手慣れているが、2人殺して気持ちが切り替わったと考えれば納得できる。
素晴らしい。ミステリーの醍醐味は謎解きじゃなくて、そのあと浮かび上がる人間の本性だね。

スーシェ版は原作の忠実再現を目指したのか、ユスティノフ版が削った要素を戻してしまった。26年も経ってるんだから、このあたりは踏襲してよかったと思うがなぁ。

容疑者

  1. リネット・リッジウェイ・ドイル ... 美しき富豪。旧友リネットからサイモンを奪った。ジャクリーンの復讐を警戒している。就寝中に射殺される。
  2. サイモン・ドイル ... リネットの夫。婚約者ジャクリーンを捨て、リネットと結婚した。事件当夜はジャクリーンに足を撃たれ、動けなかった。
  3. ジャクリーン(ジャッキー)・ド・ベルフォール ... リネットの旧友で、サイモンの元婚約者。リネットへの殺意を公言してはばからない。事件当夜はモルヒネで寝ていた。
  4. ルイーズ ... リネットのメイド。リネットに転職と結婚を邪魔されていた。朝、リネットの死体を発見する。リネットを殺した犯人を恐喝し、ベスナー医師のメスで首を切られる。
  5. アンドリュー・ペニントン ... リネットの管財人。じつは財産を横領していた。
  6. マリー・ヴァン・スカイラー ... 貴族の老婦人。盗癖があり、リネットの真珠の首飾りを盗んでいた。
  7. バウァーズ ... ヴァン・スカイラー夫人の付き添い。父親がリネットの父親によって破産していた。事件当夜はジャクリーンに付き添っていた。
  8. サロメ・オッタボーン ... 女流作家。リネットに名誉毀損で訴えられていた。ルイーズを殺した犯人を見たが、名前を言う前に射殺された。
  9. ロザリー・オッタボーン ... サロメの娘。ジャクリーンがサイモンを撃つ現場を目撃、サイモンをベスナー医師の部屋に運ぶ。母親を慕っており、リネットは共通の敵だった。
  10. ジェームズ・ファーガスン ... 社会主義者の青年。ブルジョアを憎んでいる。ジャクリーンがサイモンを撃つ現場を目撃、サイモンをベスナー医師の部屋に運ぶ。
  11. ベスナー ... 医師。リネットに名誉を傷つけられ、憎んでいた。

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ナイル殺人事件 / 名探偵ポワロ (ピーター・ユスティノフ主演)