レビュー  1992年01月12日  に発表された 

雲をつかむ死 / 名探偵ポワロ #32 (デビット・スーシェ主演)
Death in the Clouds / Agatha Christie's Poirot #32

3ツ星

「殺人なしには飛行機にも乗れないと見えますな」

あらすじ

ポワロがフランスから帰国するさいに乗った飛行機で、殺人事件が起こった。そしてアフリカ原住民の吹き矢という、突拍子もない凶器が見つかった。乗客か添乗員のだれかが、吹き矢で毒殺したのだろうか?
ポワロは眠っていたため殺人を見逃してしまった。ポワロは名誉を回復すべく、捜査に着手する。

飛行機に乗るまで15分もかかってる。都合よく乗客と添乗員(事件の容疑者)とすれ違うが、大したことは描かれない。こんなの、殺人事件の発生後に描いてもいいだろう。ポワロはスチュワーデス(ジェーン・グレイ)をしつこくナンパ。なので捜査に彼女を連れ回すのも、下心あってのことに見えてしまう。そのくせ、彼女の成長や喜びになることはしない。悲しむ彼女にやさしい言葉をかけるのも、むしろ残酷に見える。どうなんだろ、これ?

例によって推理の過程は伏せられたまま。ポワロがどこに注目し、なにを調べているのかわからないと、やっぱり没入しづらい。ヘイスティングスやジャップ警部が質問してくれれば助かるのだが。それから番組を見ながら考えるため、座席表と所持品リスト、タイムテーブルがほしかった。

ちょっと分解してみよう──。
飛行機は密室だから、容疑者は乗客か添乗員にかぎられる。動機ある人間(ホーバリ夫人)、狂気を秘めた人間(クランシー)が疑われるが、殺害方法がわからない。だれにも気づかれず吹き矢を使うのは不可能。では毒蜂か? と思わせて毒針ってのは意表を突いてる。わかってしまえば納得だが、なかなか発想できない。そして動機も「恐喝から逃れるため」ではなく「恐喝によって得られた大金をせしめるため」ってのも、うまい。だれに実行できたか? 見えるのに見えないのは添乗員だが、動機がない。つまり添乗員に変装した乗客。乗客の中で白衣をもっていたのが犯人、となる。なるほどね。クリスティの構成力は素晴らしい。
こうした推理はドラマの節々で明かしてもいいと思うのだが、やっぱり最後にまとめて謎解きしないとダメなんだろうか?

さらに考察してみよう──。
犯人はなぜ機内で凶行に及んだのか? 毒針で刺すなら列車でも飛行場でもいいはず。「コスチュームを用意できなかった」と言うのは弱いから、「イギリスに到着するまえに殺す必要があった」という制約があれば、無理なトリックに説得力が加わったと思う。
また、なぜマダム・ジゼルの娘が犯行現場に居合わせたのか? 「メイドだから仕方なく」では物足りない。直前に腹痛を起こして飛行機に乗らなければ、容疑者リストから外れたのだから。「のちのち犯人に仕立てるため」という理由があれば納得できる。彼女の持ち物からスチュワーデスの衣装が見つかれば確定だし、逮捕を悲観して自殺という展開もスマートになる。しかしこのあたりを肉付けすると、原作の成り行きから乖離してしまうか。うーむ。

ポワロとジャップ、そしてフルニエ警部の掛け合いは楽しかった。原作に比べ、フルニエ警部の出番はだいぶ削られているそうだ。ベルギー、イギリス、フランスで犯罪捜査トリオを組んでほしかった。

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雲をつかむ死 / 名探偵ポワロ #32 (デビット・スーシェ主演)