レビュー  1985年03月07日  に発表された 

ポケットにライ麦を / ミス・マープル (4)
Miss Marple / A Pocketful of Rye

3ツ星

原作に忠実だが、原作を台無しにしている

2016年、原作小説を読んで、再視聴した。ミス・マープルが中盤あたりまで登場しないことや、登場人物やイベントが多いのは原作通りだった。映像を見たときは、なぜ目当てのツグミ鉱山に注目をあつめるのか不思議だったが、東と西にツグミ鉱山があったのか。わからないよ。マッケンジー夫人も出てこないから、背後関係もさっぱり。

ドラマは三人称視点(神の視点)で描かれるから、あっちこっちに場面が飛んで、だれが、なにを知っているのかわからなくなる。ましてやマープルは途中参加で、調査シーンも少ないから、推理を組み立てにくい。というか、推理するだけの情報が提示されてない。いっそニール警部の視点で描いたほうがわかりやすいだろう。

グラディスは、マープルさんの弟子にあたるわけだが、不細工で、不器用で、不誠実で、いいところがまったくない。なのでマープルさんの怒りに共感できず、なぜ事件に首を突っ込むのか不思議だった。原作小説を読むと、マープルが愚図な娘を利用して殺したことに怒っていたことがわかる。ドラマでも怒っていたけど、義憤とまでは思わなかった。このあたりも描写不足。

エレイヌを削り、メアリー・ダブへの嫌疑を省略したのはいいが、エフィの出番は少なすぎ。雰囲気ある女優さんだから、ランスロットに助言したり、マープルに感謝するシーンはほしかった。

E「殺人者は日暮れに力弱く貧しきものを殺す...」
M「...そして夜は盗人になる」
E「残すべき財産のあるところに...」
M「...その死を願う人物が現れずには済まない」

最大の問題は、グラディスの手紙を削ってしまったこと。あれを削るんじゃ、この物語を映像化する意義がない。駄目なところは原作通り、いいところは制作の都合で割愛しちゃってる。原作への愛情や信念はないのか?

あらすじ

投資信託会社の社長、レックス・フォテスキューが毒殺された。遅効性の毒が使われたことから、イチイ層の住人が容疑者となる。翌日、後妻のアデルが毒殺され、メイドのグラディスが絞殺死体で発見された。

グラディスに行儀作法を仕込んだマープルは義憤に駆られ、フォーテスキュー家を訪れ、調査をはじめる。3つの殺人は、マザーグースの「6ペンスの唄」になぞらえていると指摘するが、前半の「クロツグミ」に符合するものがわからない。

  1. レックス・フォテスキュー ... 投資信託会社社長。イチイの毒で殺される。
  2. アデル・フォテスキュー ... レックスの後妻。ティータイムに毒殺される。
  3. パーシヴァル・フォテスキュー ... レックスの長男。経営者。父はピック病と思い、放逐しようと考えていた。
  4. ジェニファ・フォテスキュー ... パーシヴァルの妻。多額の遺産分与を約束されていた。
  5. ランスロット・フォテスキュー ... レックスの次男。勘当され、アフリカで暮らしていた。
  6. パトリシア・フォテスキュー ... ランスロットの妻。貴族。
  7. エフィ・ラムズボトム ... レックスの義姉。家族に不信感を抱いている。
  8. メアリー・ダブ ... フォテスキュー家の家政婦。
  9. クランプ ... フォテスキュー家の執事
  10. クランプ夫人 ... クランプの妻。フォテスキュー家の料理人。
  11. グラディス・マーティン ... フォテスキュー家の小間使い。

調査によって、半年前にパイにツグミの死体を入れる悪戯があったこと、数十年前にツグミ鉱山をめぐってマッケンジー夫人と悶着があったことがわかる。
そのとき、財産分与を終えたパーシヴァルがイチイ荘を出て行ったため、マープルは警察に身柄を拘束するよう指示する。

[ネタバレ]

犯人はランスロット。グラディスをたらしこんで、そうとは知らせず毒入りマーマレードをレックスに食べさせた。混乱するグラディスを絞殺し、イチイ荘に帰ったあとにアデルのお茶に毒を混ぜた。「6ペンスの唄」になぞらえることで、罪をマッケンジー夫人に向けさせる魂胆だった。
警察に追われたランスロットは事故を起こして死亡する。動機はツグミ鉱山に眠るウラン鉱脈だった。そしてツグミの悪戯をしたのはジェニファー。彼女はマッケンジーの娘だった。

ラストはほんと唐突。なにか事情があって、制作を切り上げたような雰囲気。パトリシアもケバくて反応に乏しいから、悲しむべきか呆れるべきか迷った。

ラスト、マープルはジェニファーの正体を見抜いていたことを告げる。ジェニファーは遺産をもらって離婚すると言う。これでフォーテスキューの会社はおしまい。つまるところ、ジェニファーは復讐のため結婚したわけで、なんの救いもない。ここは希望あるラストに変えてほしかった。
整理したらもっとおもしろくなりそうな気がするんだけどなぁ。

ポケットにライ麦を (1986)
※ポケットにライ麦を (1986)

ポケットにライ麦を (2009)
※ポケットにライ麦を (2009)

ポケットにライ麦を (2017)
※【ゆっくり文庫】ポケットにライ麦を (2017)

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ポケットにライ麦を / ミス・マープル (4)