レビュー  1986年01月08日  に発表された 

死者のあやまち / 名探偵ポワロ (ピーター・ユスティノフ主演)
Dead Man's Folly

3ツ星

驚くべきは作家の直感か

あらすじ

オリヴァ夫人はナス屋敷で開催される祭りで「死体探しゲーム」の筋書きを書くことになった。しかし本当の殺人が怒る予感がしたため、ポワロとヘイスティングスを呼び寄せる。はたして祭りの当日、死体役だった少女(マーリーン)の絞殺死体で発見される。そしてナス屋敷の主の妻(ハティ)が行方不明になり、舟番(ジョン・マーデル)の溺死体が発見された。

なにが起こっているのか、さっぱりわからなかった。謎解きを聞けば、そうだったのかと思わなくもないが、やはり飛躍しているように感じる。ちょっと整理してみよう。

ポワロの推理

  • 3ヶ月前に投函された手紙が当日届くはずがない
    • →夫人はウソをついている
    • →夫人はスーザに会いたくない or 会えない
    • →(?)→夫人はニセモノ
    • →フォリアット夫人、スタッブス卿も知っている
    • →本物の夫人は殺されている。
    • →(?)→死体は阿房宮に埋まっている。
    • →フォリアット夫人なぜスタッブス卿をかばう?
    • →身内?→軍の記録を照会する
  • マーリーンは舟番(祖父)から聞いたネタで恐喝していた
    • →舟番は殺害現場を見てしまった
    • →犯人の目的は恐喝者の口封じ
    • →そのために祭りの「死体探しゲーム」を利用した
    • →スタッブス卿は水泳が達者
    • →スタッブス卿が舟番を川に引きずり込んだ
  • イタリア人旅行者は顔と手の色が合ってない(ボートの上での観察)
    • →(?)→夫人の変装にちがいない
    • →スタッブス卿は、その旅行客を追っ払った
    • →あれは演技
    • →(?)→夫人はユースホステルに潜伏中。

犯人サイドの思考

  • ジェイムズ・フォリアットは軍を脱走した。
  • 成功し、財産を築き、スタッブス卿となる。
  • フォリアット夫人は息子のため、ハティとの結婚を薦める。
  • ジェイムズは結婚していたので、ハティを殺害。
  • 死体を捨てる現場を舟番に見られた。
  • 孫娘に脅迫された。
  • 祭りの日、ハティの旧友(スーザ)がやってくる。
  • 舟番と孫娘を殺し、その罪をスーザに着せようと発案。
  • オリヴァ夫人に筋書きを書いてもらい、ところどころ修正する。
  • 実行。
  • 旅行客に化けたところをポワロに目撃されたので、追っ払う演技をする?

犯人の行動で不可解なところ

  • 殺人計画に必要な筋書きを、なぜ本物の探偵小説家に依頼したのか?
  • スーザがハティを殺害したとして、その現場を孫娘(マーリーン)が目撃し、口封じのため殺されたなら、死体がボート小屋で見つかるのはおかしい。孫娘がスーザを招き入れたなら、殺害現場を見ていなかったことになる。殺人容疑はゲームの企画者に絞られるため、犯人にとって不利。ボート小屋のドアを開けておくべきだった。
  • 偽ハティはどうやって帰ってくるつもりだったのか? いずれ帰ってくれば、その時点でスーザの容疑は晴れて、対面してしまう。
  • スーザにハティ殺害または誘拐する動機がないため、逮捕される見込みは薄い。ましてや死体なきまま立件され、死刑になるとは思えず、遠からず釈放されるだろう。つまり問題が解決しない。
  • 偽ハティは2度と帰ってこないつもりなら、祭りの日を待たずに失踪すればいい。
  • いずれにせよ、偽ハティがユースホステルに潜伏する必要はない。

うん、これはダメだ。
犯罪が破綻してるから、推理も飛躍する。

キャラクターはおもしろい

犯罪とトリックはダメだが、キャラクターはおもしろかった。まず、ヘイスティングスに癒やされる。ヘイスティングスは原作にいないし、さしたる行動もしないが、熱心にメモを取ったり、場面ごとに感想を述べてくれるから安心する。今回は軍隊式の考察を試みるが、ポワロに笑われ、失礼だぞと怒る。ポワロもすぐ侘びて、いっしょに推理する。なんだかんだで親友同士だね。

オリヴァ夫人も楽しい。強引で、マイペースで、しゃべりだすと止まらない。猛烈にうざいが、憎めない。出会う人に本を勧めて回るが、ポワロ含め、だれも読んでくれない。スーシェ版のゾーイ・ワナメイカーとまったく異なるが、これはこれでアリだ。
オリヴァ夫人は、関係者が口にしていない本性を見抜き、根拠なく悲劇を予知している。本作でもっとも不可解なキャラクターだ。彼女はクリスティの分身らしいから、クリスティ自身に類似する経験があったのかもしれない。あるいは類似する経験があったから、この物語を書いたのだろう。

劇中、「15年前のABC殺人事件」の話がちょこちょこ出てくる。このポワロとヘイスティングスなら、どんな「ABC殺人事件」になっただろう? そんなことことを思わせるだけの魅力があった。

スーシェ版との比較

本作視聴後、スーシェ版「#68 死者のあやまち」(2013)を見たが、おおむね下記のような特徴があった。

  1. オリヴァ夫人の直感が強調される。
  2. 舟番がフォリアット家の歌を歌わない。
  3. 本物のハティは知恵遅れで、財産があった。
  4. スーザの手紙が届いたのは3週間前。
  5. スーザの上着に指輪を入れることで容疑を固め、逮捕させる。
  6. スタッブス卿は水泳を嗜まない。
  7. ハティの変装が見破られない。イタリア出身の悪人に。
  8. ハティは行方知れずのまま。
  9. フォリアット夫人の悔悟が少ない。
  10. 結末。

どちらが優れているということはなく、ぶっちゃけ、どちらも足りない。双方の長所を足し合わせても、まだ不合理な点は残る。
フォリアット夫人が誤ってハティを殺したとか、スタッブス卿とハティを兄妹だったとか、もともと目撃者の始末だけが目的だったが、スーザの来訪で計画が狂ったとか、思い切った翻案が必要そうだ。

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死者のあやまち / 名探偵ポワロ (ピーター・ユスティノフ主演)