レビュー  2003年12月26日  に発表された 

杉の棺 / 名探偵ポワロ #51 (デビット・スーシェ主演)
Sad Cypress / Agatha Christie's Poirot #51

3ツ星

「死を願うことは罪ではありません」

あらすじ

エリノアは叔母(ウェルマン夫人)の死によって莫大な遺産を相続するが、幼なじみ(メアリ)に婚約者(ロディ)を奪われてしまった。その後、メアリが毒殺される。エリノアは逮捕され、死刑判決を受ける。不審に感じたポワロは、死刑が執行されるまでに真犯人を見つけようとする。

演出がうまかった。主治医ロードは友人であるポワロにも事実を伏せ、手を引けと言う。婚約者ロディは証拠となりうる手紙を燃やし、メアリに接近する。メアリの気持ちはまったく描かれないが、とんでもない悪女に見えなくもない。慕っていた叔母はメアリを可愛がり、メイドたちに陰口を叩かれる。莫大な遺産を相続しながら、ひどく孤立するエリノア。さらにはポワロまで、エリノアの犯行と断言する。死刑が執行される前に、世界が終わってしまうようだった。

しかしポワロが夢を見てから、もろもろ裏返っていく。サンドイッチに毒を入れることが困難なら紅茶が疑わしいが、メイドもいっしょに飲んでいる。ロードの処方集から、催吐剤(apomorphine)によって無効化できるとわかる。メアリ殺害が復讐でないなら、だれが利益を得るのか? メアリがウェルマン夫人の実子なら、メアリに遺言書を書かせたのはだれか? ニュージーランドに住む叔母は何者か? 一方、エリノアは元婚約者と趣味が合ってなかったこと、主治医がつねにエリノアを守ろうとしていたことが明らかになる。なるほどねぇ。

ポワロは主治医と婚約者を呼び寄せ、推理を披露するが、途中で退席してしまう。ここで語られる推理の過程は、もうちょい前の段階で教えてほしかった。ポワロはつづいて看護婦と話をして、メイドとお茶を飲むが、死刑執行が目前に迫る状況でどうなのよと思ったが、まぁ、コップのすり替えや声の調子が変わるところはかっこよかった。

ウェルマン夫人「昔からよくいう言葉よ。あまりに愛しすぎてはいけないってことね」
エリノア「ねぇ、おばさま。教えてちょうだい、正直に。人を愛するって、ほんとうに、しあわせなことなの?」
ウェルマン夫人「エリノア。たぶん喜びより悲しみのほうが多いわ。でも人は愛なしに生きられない。誰にしろ、本当に愛したことがない人は、生きたとは言えない...」

序盤でウェルマン夫人が言ったことが、あんがい、この事件の本質をよく表していた。エリノアは婚約者を愛したが、愛しすぎて、愛されてないことに気づかなかった。そのため悲しむことになるが、主治医との愛を得た。うまくできてる。

最初に見たときはメアリが謎の存在で困惑した。しかし4回見ると、謎の存在である方がいいように思えた。婚約者も不実な男ではあるが、財産を相続したエリノアとの復縁を求めなかったことから、彼も悪人ではなかった。キャラクターの印象が変わる演出がおもしろい一本だった。

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杉の棺 / 名探偵ポワロ #51 (デビット・スーシェ主演)