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[レビュー2011年12月26日に発表された 

複数の時計 / 名探偵ポワロ #65 (デビット・スーシェ主演)

The Clocks / Agatha Christie's Poirot #65

「複数の時計」がなんだって?

プロット

MI6の諜報員であるコリンは、盗まれた機密を追ってクレセント通りにやってきた。ここにドイツのスパイが潜んでいるはず。すると悲鳴が聞こえ、19号の家から若い女性(シーラ)が飛び出してきた。家の中に死体があると言う。コリンは現場を保全し、警察を呼んだ。

シーラは派遣タイピストで、上司の命令で19号の家にやってきた。留守だったため家の中で待っていたところ、死体を発見したという。しかし19号の住人である盲目の老嬢、ミス・ペブマーシュはタイピストを喚んでおらず、殺された男性も知らないと証言する。
ややこしくなったコリンは、父親の友人であるポワロに捜査を依頼する。ポワロは、シーラの証言と現場にあった時計の数がちがうことに気づく。この時計もまた、ミス・ペブマーシュのものではないと言う。

ドイツのスパイや複数の時計といったものに目を奪われるが、落ち着いて分解すれば、ただの死体遺棄事件である。タイピストが派遣先に死体を持っていくはずないから、死体を捨てた家にタイピストを喚んだことになる。家主のペブマーシュが第一発見者を招く理由もないから、疑わしいのはマーティンデール所長。じつにシンプル。要するに死体遺棄事件と機密盗難事件は関係なかった。
さらに言えば、複数の時計にも「4:13」という表示にも意味はなかった。かろうじて413号室という関連が示されたが、「不倫相手の妻がシーラに警告している」といった推理もない。「複数の時計」なんてタイトルをつけて、これはずるい。

コリンとシーラが恋愛関係になるのは突飛だが、コリンの説得力を奪われる展開で納得した。しかしだったら、ポーカーにかまけて恋人を死なせてしまう過去は不要だろう。シーラの売春にもドラマ性が皆無で拍子抜け。ラブロマンスを描きながら、なぜ組み込まないのか?

シーラの視点を描いたのは演出上の失敗だね。シーラが上司に命じられて19号を訪れ、複数の時計を見て、死体を見つけるまでが映像化されたら、視聴者はそれを事実と受け止める。コリン視点に固定して、通りに飛び出してきた女性が「人が死んでます」と叫ぶところからスタートすれば、「彼女は本当のことを言っているのか?」という疑念が湧いたはず。「シーラが犯人かも?」と思わせることなしに、本作のミステリーは成立しない。

それにつけても今回は無能ばっかりだった。MI6は機密を盗まれるし、捜査対象と深い関係になる。警察は証言者の話を聞かず、監視対象をみすみす殺される。スパイは庭先で秘密の話をして、少女たちに機密を隠される。所長たちの計画も粗い。シーラは善良かつ有能に見えるから、スケープゴートに向いてない。前科があるとか、極端に口下手とか、社会的信用がない人物を選ばないと。裁判の証言にも配慮が足りず、よけいな殺人を背負い込んでいる。こんなことなら死体を路上に捨てたほうが、警察の目を逸らせたかもね。

整理すればおもしろくなりそうだが、整理すると短編になっちゃうから、難しいところか。

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