レビュー  1964年09月01日  に発表された 

ミス・マープル/最も卑劣な殺人 (アガサ・クリスティー「マギンティ夫人は死んだ」)
Murder Most Foul

4ツ星

天使じゃありません

あらすじ

清掃夫のマギンティ夫人が殺され、下宿人が逮捕された。裁判官は有罪を確信するが、陪審員のミス・マープルが納得しないため、審議は中断される。ミス・マープルは独自に調査をはじめる。

マギンティ夫人は、13年前に起こった「なにか」で、ある劇団の「だれか」を脅迫していた。マープルはその劇団に研修生として潜入する。その矢先、劇団員が毒殺される。クラドック警部補は、マギンティ夫人を殺害した犯人が自殺したと考えるが、マープルは納得しない。

マープルは調査をつづけるが、青酸ガスで家政婦が死亡。犯人の殺意を感じ取ったマープルは、対決に備える。

マーガレット・ラザフォード演じる「ミス・マープル」シリーズ第3作。原作はポワロの『マギンティ夫人は死んだ(Mrs McGinty's Dead)』だが、登場人物や展開が大きく変えられており、ミス・マープルの新たなエピソードとして十二分に楽しめる。
デビット・スーシェ版のポワロ第58話『マギンティ夫人は死んだ』に比べ、格段にわかりやすい。マギンティ夫人が脅迫していたことが序盤で明かされ、それが物語の軸になる。「13年前にあったお芝居」で「劇団の関係者」と、調査対象も明瞭。芝居のセリフで、「マギンティ夫人は死んだ!」と言わせるのもうまい。

ただ、推理はちょっと強引。俳優ジョージが自殺ではなく殺人とする根拠が乏しいし、犯人の正体も唐突感がある。しかし霊感少女エヴァは印象的だった。タイトルの「Murder Most Foul」はハムレットからの引用らしい。だったら劇中で、マープルが犯人の卑劣さに怒るシーンが欲しかったかな。

不思議な魅力があるマープル

例によってマーガレット・マープルはパワフル。のっしのっしと歩き、マントをひるがえし、ちょっとした知恵で潜入捜査を果たし、命を狙われても動じない。原作のマープルとは似ても似つかぬが、これはこれでかっこいい。
寒がるストリンガーの膝にマントをかけて、いっしょにベンチに座るシーンは、不覚にもドキドキしてしまった。マープルは老婆だから、女の色香ではない。しかし男にはない魅力がある。不思議なものだ。
あとで知ったことだが、この2人は現実に夫婦だったのね。なるほど。
犯人との対決は舞台の上・・・と思っていたが、意外や意外、舞台の下だった。いくらマープルでも、お芝居をぶち壊すことはなかったか、と思ったが、結果的にぶち壊されてしまった。

マープルはナイフを構える犯人を、マープルはピストルで威嚇し、制圧する。銃の腕前があろうと、なかなかできることじゃない。「映画だから」と言われればそれまでだが、マープルの胆力、経験を裏付けるシーンだった。まぁ、原作のマープルはあんなことしないけど。

憎めないクラドック警部補

ミステリーの定石として、警察(クラドック警部補)は無能に描かれている。しかし場面ごとに常識的な考えを述べてくれるし、効果はなくともマープルを引き止めてくれるなど、しっかり役どころを押さえている。あれほど否定していたマープルの功績で警部に昇進したのはずるいが、憎めないキャラクターに仕上がっている。いいね。

安定しなかったコスグッド氏

マネージャーのコスグッド氏は、マープルを研修生として採用し、事件の手がかりになる脚本を読ませ、探偵という役柄を与える。例によってマープルに好意があるかと思ったが、じつは金持ち婆さんからの融資を期待していただけというオチは、がっかり。まぁ、毎度毎度、言い寄られる老婆というのも奇妙だけどさ。

それにつけても演出がいい。夜、巡回中の警官がビールを飲んで、《手》に代金を要求される。その背後の窓に、殺人の様子が照らし出される。もう、このオープニングでがっちりハートを掴まれ、そのまま最後まで興奮が維持された。

いい映画だった。


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ミス・マープル/最も卑劣な殺人 (アガサ・クリスティー「マギンティ夫人は死んだ」)