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[レビュー1989年12月30日に発表された 

名探偵ポワロ (13シーズン/全70話)

Agatha Christie's Poirot

名探偵の人生を描いたシリーズ

プロデューサーの退任や制作母体の変遷など、さまざまな苦難を乗り越え、24年で13シーズン、全70話を達成したシリーズ。衣装や背景、小道具からうかがえる1930年代の雰囲気も素晴らしい。この番組がなかったら、1930年代と聞いて思い浮かぶイメージはなかっただろう。

Season 1 (1989)

コックを捜せ
無断で姿を消したコックを捜してほしい。名探偵がささいな事件に挑む。
第一話だが登場人物の紹介はまったくナシ。「もみあげ」を言えないところで、ポワロが外国人とわかるくらい。ポワロは説明を要さないほど有名なのか、イギリスのテレビドラマはそーゆー文化なのか。役者さんの変装は申し分ないが、吹き替えでトリックが露見してしまう。日本人視聴者は役者の顔より、声で個人を識別する訓練を受けているからなぁ。後味はいいね。
ミューズ街の殺人
ガイ・フォークス・デイの夜、女性の射殺体が発見された。自殺に思われたが、不審な点がある。ジャップ警部は「自殺に見せかけた他殺」を疑う。
動機は友情ではなく、愛だと思う。それも切なく、狂おしい愛。しかしそこを描くとドラマが湿っぽくなるか。ミス・レモン、ヘイスティングスの会話が楽しい。「襟の硬さ、主人、激怒!」
ジョニー・ウェイバリー誘拐事件
貴族の子息が誘拐された。犯人はなぜ誘拐を予告して、どうやってポワロを出し抜いたのか?
犯人の行動は行き当たりばったりで、このあと、どう始末をつけるつもりだったのか。没落する貴族の実情は興味深い。車があるのに汽車で帰るポワロは頑固すぎる。
24羽の黒つぐみ
資産家の老人が亡くなった。資産家の生活は同じことの繰り返しだったが、死ぬ数日前に1度だけ、いつもと異なる行動をしていた。
『コックを捜せ』同様、声でわかってしまうが、それ以前に「変装っぽい雰囲気」が残っている。若者→老人の変装は難しい。ポワロがクリケットに詳しいことに驚いた。
4階の部屋
ポワロが住むマンションで殺人事件が起こる。ポワロは発見者の若者たちと捜査するが、奇妙な行動をする。
風邪をひいたポワロを、ミス・レモンの治療法と、ヘイスティングスの気晴らしが苛立たせる。事件は突飛だが、ポワロの罠はよかった。にっこり掛け金を払うところもお茶目。女の子たちはうるさいが、彼女たちを見るポワロの目に余裕がある。シリーズ後半の哀愁を踏まえて見直すと、感慨深い。
砂に書かれた三角形
ロードス島でバカンスを楽しむポワロ。2組の夫婦が険悪な雰囲気になり、殺人事件が起こる。
なかなか事件が起こらなくてヤキモキする。あわやポワロは去ってしまった、と思いきや、港の税関で怒鳴っていたのが笑える。臨時パートナーのパメラも好印象。事件の構図は意外だったが、ポワロの気づきは弱い気もする。構造としては「ナイルに死す」のプロトタイプみたい。それから、どうやって少佐の正体に気づいたのか?
海上の悲劇
ポワロとヘイスティングスが船旅を楽しんでいる。乗客のクラパトン大佐は、傍若無人な夫人に悩まされていた。アレクサンドリアに停泊中、夫人が殺害された。大佐は下船しており、アリバイがあった。
犯人の殺人を決意した背景に、「若さ」があったことは切ない。しかし劇中でも指摘されたとおり、あの降霊術は残酷だ。「殺人は許せません!」とポワロは言うが、説得力はない。
なぞの盗難事件
メイフィールド邸から新型戦闘機の設計図が盗まれた。ドイツのスパイと噂されるバンダリン夫人が疑われたが...
要領を得ない。見どころはカーチェイスと、ジャップ警部のいびきに悩まされるヘイスティングスくらい。冒頭で話題となる体積の計算も、事件に関係なかった。
クラブのキング
映画プロデューサーが殺害された。第一発見者の女優は彼と対立していた。女優の婚約者がポワロに調査を依頼する。
カードが欠けていた→証言者はうそをついている→なぜか? という着想はおもしろい。しかし「家族万歳」で見過ごすのは意外。まぁ、依頼人の要望もあるから仕方ないけどさ。
大富豪の老人に呼び出されたポワロは、「自殺する夢を見る」という曖昧な話を聞かされる。後日、その話とまったく同じ状況で老人の死体が発見された。
当時を再現したであろう工場の様子や宣伝がうまい。トリックは単純だが、幕間劇がおもしろい。「幸せよりタイプライターがほしい」と言われたのに、ニコニコしながら置き時計を贈るポワロ。「身体の中に強い磁力があるから腕時計がダメ」とか言っちゃうミス・レモン。たまらない。

Season 2 (1989)

エンドハウスの怪事件
エンドハウスの若き女主人ニックは、3日で3回も死にかけたと笑う。だれかに狙われていると察したポワロは、護衛を申し出る。花火の夜、ニックのショールを羽織った従妹マギーが殺された。ポワロは厳戒態勢を敷くが、ニックも毒殺されてしまった。
シリーズ初の長編。ミス・レモンの降霊術が最高。ヘイスティングスも役に立ってる。ジャップ警部も含めた4人が素晴らしかった。
ベールをかけた女
ポワロは美しい女性に依頼され、恐喝者が隠し持つ手紙を回収することに。ヘイスティングをいっしょ恐喝者の家に忍び込むが...
見どころは潜入シーン。ヒゲが立ってないポワロはマリオみたい。逮捕され、釈放され、それでも尺が足りなかったから最後は追いかけっこ。頭脳勝負じゃないが、こーゆーのもいいね。
消えた廃坑
銀行の頭取に依頼され、商談相手の中国人を探すことになったポワロ。しかし中国人は死体となって発見され、彼がもっていた銀鉱山の地図も消えていた。
見どころはモノポリー。ダイスに息を吹きかけるのは個人的なクセなのか、英国の風習なのか。スコットランド・ヤードの追跡システムも楽しい。事件そのものは単純で、やや拍子抜け。ポワロの気付きも偶然にたよっている。
コーンワルの毒殺事件
「夫に毒を盛られているのではないか?」 ペンゲリー夫人の訴えを受け、ポワロはコーンワルの村を尋ねるが、時すでに遅く、夫人は死んでいた。
コーンワルの情景は素晴らしいが、背後にある人間関係は醜悪。ポワロは証拠らしい証拠もなく犯人を言い当ててしまうため、知的興奮もとぼしい。ただヘイスティングスはいつにかく仕事をしている。コメの効果か。
ダベンハイム失そう事件
銀行家ダベンハイム氏は、ライバルのロウエン氏と面会する直前に失踪した。ポワロはジャップ警部との賭けで、部屋から出ることなく一週間で謎を解いてみせることに。
ポワロが下がることで、ジャップ警部とヘイスティングスの活躍が増えるのはいい。変装トリックは声でバレてしまうが、事件よりキャラクターを楽しめる。それで十分。
二重の罪
イギリス北部を旅行中のポワロとヘイスティングス。道中、知り合った少女メアリは、細密画を盗まれて困り果てる。みかねたヘイスティングスが捜査に乗り出すが...
これまたポワロが手を出さず、ヘイスティングスが駆け回っている。合間合間にミス・レモンによる鍵の捜索が挟まれる。こういう尺埋めが楽しい。犯人の自滅で決着したのは物足りない。証拠と推理がほしい。
安いマンションの事件
若い夫婦が高級マンションを格安の家賃で借りることができた。ポワロが調べてみると、スパイ事件を追跡するジャップ警部に出くわした。
ポワロが部屋に潜入するシーンは、物語の展開に必要ではないが、楽しい。ミス・レモンの調査、発砲したがるFBI捜査官、困惑する支配人など、脇役も魅力的。同姓の夫婦が借りに来るのを待つなんて馬鹿げてるが、キャラクターの魅力で乗り切った。
誘拐された総理大臣
渡仏した首相が誘拐された。ポワロは調査を依頼されるが、なぜかフランスに渡ろうとしない。
ジャップ警部が言ったとおり、「なにをしてるかわかるが、なんのためかわからない」。なんのためかは後にわかるが、なぜ気づいたのかわからない。ポワロと仕立て屋の会話が楽しかった。
西洋の星の盗難事件
女優マリーのもとに、宝石《西洋の星》を盗むという脅迫状が届く。ポワロは宝石を預かると申し出るが、マリーは承服しない。一方、これと対をなす宝石《東洋の星》の持ち主にも脅迫状が届いていた。
ヘイスティングスのせいで話がこじれる展開はいいが、最後まで宝石が2つあると思い込んでるところは救いようがない。これはこれでいいけど。ポワロの判断でジャップ警部が獲物を取り逃してしまったが、なんのフォローもない。いいのか?
スタイルズ荘の怪事件
第一次世界大戦のさなか、療養休暇でスタイルズ荘を訪れたヘイスティングス注意は、かつてベルギーで知り合ったポワロと再開する。その後、スタイルズ荘の女主人エミリーが殺されたため、ヘイスティングスはポワロといっしょに捜査をはじめる。疑わしいのは20歳も年下の夫アルフレッドだが、ポワロは彼が落ち着いていることに違和感をおぼえる。
長編。アルフレッド・イングルソープが不気味。エヴリンとの関係も含め、ぞっとする結末だった。ポワロもヘイスティングスが、ほんとに若く見える。「戦争が終わったら、また一緒に仕事をしましょう」というセリフは、日本人にない感覚だなと思った。

Series 3 (1991)

あなたの庭はどんな庭?
ポワロはフラワー・ショーで、老婦人から空っぽの種袋を託される。意味がわからないポワロは後日、彼女の家に出向くが、すでに彼女は死んでいた。
ヘイスティングスが花粉症のため、ミス・レモンが捜査に同行。留守中、散らかしてしまったヘイスティングスが叱られる展開が楽しい。ミス・レモンは戦時中、遺体置き場で働いていたそうだが、だからといってこんな変人にならないだろう。事件の推理はいい加減だったが、犯人がおもしろかったのでオッケー。
100万ドル債券盗難事件
100万ドルの債権を船でアメリカに運ぶことになった。ところが運搬役の部長が不審な事故にあったため、重役はポワロに調査と護衛を依頼する。
ニュース映像はそれっぽいが、船上はやっぱりセットっぽい。船に乗らずとも推理できるから、精一杯のサービスだろうな。ブロンド美人→地味な看護婦への変身は驚き。犯人が自白して終わり、じゃないところも意表を突く。ヘイスティングスが美人と不美人のちがいに悩み、ポワロが「知恵がついてきましたね」と祝杯をあげるラストもよかった。
プリマス行き急行列車
大富豪の娘フローレンスが、プリマス行き急行列車で殺され、宝石類を盗まれた。犯人はフローレンスにつきまとうロシュフォール伯爵か、夫ルパートのいずれかと考えられた。
2人の容疑者をヘイスティングスとジャップ警部が追い、ミス・レモンのファイルが犯人の相棒を見つけ出す。そしてポワロは核心を突く。役割分担がうれしい。父親の悲しみがクローズアップされたことで、祝杯をあげる気分にはなれないが。
スズメバチの巣
ある日の午後、ハリスンの家にポワロが訊ねてきた。ポワロはこれから起こる殺人を未然に防ぎたいと言い出す。
うまく拡張しているが、やはり原作の切れ味に劣る。思うところもがあって、自分で演出してみた。
マースドン荘の惨劇
難事件があると聞いて遠方まで駆けつけたが、それは宿屋の主人が書いた推理小説の話だった。怒って帰ろうとしたところ、マースドン荘の主、マルトラバース氏が殺される。
犯人は賢くないが、取り返しの付かないことをやってしまうところがリアルで、やばい。おぞましい事件だが、推理小説や蝋人形をめぐるドタバタで癒やされる。ガスマスクの訓練が時代を感じさせるね。
二重の手がかり
上流階級で起こる連続宝石盗難事件。解決できないとジャップはクビになる。しかしポワロは捜査そっちのけで、ロサコフ伯爵夫人とデートを楽しんでいた。
ポワロの想い人、ロサコフ伯爵夫人が登場。しかし知的な駆け引きはなく、魅力がさっぱりわからない。そもそも追うものと追われるものの関係だから、ロマンティックなムードを額面通り受け取ることはできない。原作とも、「ヘラクレスの遺業」に再登場する伯爵夫人とも、人物造形が異なる。ちゃんと考えてなさそう。
スペイン櫃の秘密
クレイトン夫人が夫に命をねらわれている。旧知の女性に相談されたポワロが、夫妻が出席するパーティに足を運ぶ。しかしクレイトン氏は姿を見せず、翌日、死体で発見された。
冒頭で決闘シーンを流しちゃったから、犯人の目星がついてしまう。仕掛けは驚くが、よくよく考えると不自然。ポワロが決闘をけしかけるのも奇妙。幕間は秘書代行するヘイスティングス、タイプライターと悪戦苦闘するジャップ警部、世界一謙虚になると宣言するポワロ。ダンスのステップが軽快だった。
盗まれたロイヤル・ルビー
キングス・レイシー屋敷のクリスマス・パーティーに招待されたポワロ。じつは盗まれたルビーの行方を追っていた。翌朝、レイシー大佐の孫娘が殺される。
微笑ましいクリスマス・ストーリー。馬鹿な王子がいいアクセント。チョコレートを食べたくなる。
戦勝舞踏会事件
ポワロとヘイスティングスが参加した戦勝記念の仮面舞踏会で、クロンショー卿が殺害された。
ポワロをおだてて引っ張り出すヘイスティングス。今回のヘイスティングスはちゃんと役に立ってる。仮面のため登場人物がわかりにくい。ラジオ番組で解決する趣向はおもしろかった。
猟人荘の怪事件
ヘイスティングスの猟につきあって風邪をひいたポワロ。ヘイスティングスの友人であるロジャーの伯父が殺され、家政婦のミドルトン夫人が姿を消した。動けないポワロの代わりにヘイスティングスが捜査に乗り出す。
導入はいいが、あっさりポワロが復活して台無し。もうちょい活躍させてあげてよ。「コックを探せ」「24羽の黒つぐみ」と同じく、若者→老人の不自然に見える。

Series 4 (1992)

ABC殺人事件
ポワロのもとに、ABCと名乗る人物から殺人予告が届く。そして予告されたとおり、アルファベット順の場所で、アルファベット順の名前をもつ人が殺されていく。やがて犯人が逮捕されるが...
見立て殺人の代名詞。ミステリーの入門書として押さえておきたい。
雲をつかむ死
金貸しの老婦人が、ポワロが乗り合わせた飛行機の中で死んだ。かたわらには南米の原住民が使う吹き矢が落ちていた。ポワロは眠っていたため、殺人の瞬間を見ていない。犯人はどうやって老婦人を殺したのか?
ポワロはスチュワーデスをナンパし、捜査に連れ回し、その恋路を台無しにする。
愛国殺人
ポワロのかかりつけの歯科医が、診察室で死体となって発見された。ギリシャ人患者に麻酔を過剰投与したことを悔いての自殺と思われたが、ポワロは納得できない。
診察室に入った人物の中に犯人がいる。状況設定はおもしろいが、ポワロは元女優の殺人事件を追いはじめる。わけがわからないまま謎解き。推理は飛躍しており、「愛国殺人」というタイトルも意味不明。いろいろ足りない。

Series 5 (1993)

エジプト墳墓のなぞ
エジプトの王家の谷の発掘隊メンバーが次々に変死。王の呪いではないかと恐れる夫人の依頼で、ポワロはエジプトに赴く。
ロンドン、ニューヨーク、エジプトと目まぐるしく舞台が変わり、4人も死んでしまう。現代人の感覚では「王の呪い」を疑う余地はなく、いまひとつ没入できなかった。ポワロの死んだふりも、無謀かつ無意味だった。
負け犬
アストウェル化学の社長サー・ルーベンが書斎で撲殺された。ルーベンは金の亡者で、書斎に入った全員と喧嘩していた。警察は甥のチャールズを逮捕したが...
犯人はカッとなる人間ではなく、我慢強い人物というのはおもしろい。しかし事件より、催眠術を使って証言を引き出したことに驚く。茶番じゃない。おいおい。
黄色いアイリス
ポワロは黄色いアイリスに導かれ、2年前の未解決事件と向き合う。それはレストランの席上で起こった突然死。他殺とすれば、どうやって毒を盛ったのか?
トリックはありきたりだが、導入部は魅力的。ペロッと舐めて「青酸カリ」というのは、ジョークだろうか? 「イギリスに料理はありません」と辛辣なポワロに、最後にお返しするヘイスティングスもよかった。
なぞの遺言書
クラブツリーの主アンドルー・マーシュは、養女バイオレットの才能を認め、彼女に全財産を遺すに決める。ところが遺言書を書きかえる前に彼は死に、前の遺言書も消えてしまう。
ケンブリッジ大学の議論がおもしろい。まさか事件のヒントになるとは思わなかった。だれにでも可能な犯行なので、犯人を特定する根拠が乏しいのはいただけない。人情に訴えるには、登場人物の描写が足りない。
イタリア貴族殺害事件
ミス・レモンのボーイフレンド、グレイブスが仕えるフォスカティーニ伯爵が殺された。グレイブスによれば、伯爵は秘密書類を買い戻す交渉に当たっていたそうだが、現場には書類も金も見当たらない。
事件よりミス・レモンの恋の行方が気になる。「犯人はだれか?」が、「被害者はだれか?」に入れ替わるのはおもしろい。しかし電話がヒントなら、もうちょい早く気づいてもよかったのでは? 恋人より猫を優先するミス・レモンが痛快だった。
チョコレートの箱
ベルギーで叙勲を受けることになったジャップ警部。ポワロは同伴し、故郷ブリュッセルを訪れた。旧友たちとの再開に触発され、ポワロはベルギー警察時代に犯した失敗について語りはじめる。
ポワロ、探偵としての初仕事。それをジャップ警部と振り返る構成がいい。制服&黒髪のポワロは、ほんとに若かりし頃に見える。組織のしがらみと情けから沈黙したポワロ。意外な結実。いいねぇ。
死人の鏡
ポワロは競売所で横柄な金持ちジャベイスに声をかけられ、詐欺事件を調査することに。現地に赴くと、ジャベイスは多くの人に嫌われていた。その夜、ジャベイスは死体となって発見された。密室、遺書、銃声が轟いたとき全員にアリバイがあったため、自殺と思われたが...
次々に見つかる証拠、関係者の不審な言動・・・。証拠と推理によって犯人が特定されると思いきや、拍子抜けの結末。と思いきや、それも引っ掛け。屋敷に響き渡る声はミス・レモンと思いきや、それは勘違い。犯人行動は稚拙だが、じつは決定的証拠がなかった。
グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件
ポワロが滞在したホテルで有名な真珠の盗難事件が発生。容疑は真珠の持ち主オパルセン夫人のメイドと、ホテルのメイドの2人にかかる。
メイドは盗む機会はあったが、金庫を開ける余裕はなかった。シンプルな状況を、転地療養、ラッキー・レン探し、豚に真珠のお芝居、ゲスな支配人といった要素で盛り上げている。象の杖をもった不審者や支配人の逮捕、密輸、舞台での逮捕は盛りすぎかな。ミス・レモンがかっこいい。

Series 6 (1995-96)

ポワロのクリスマス
クリスマス。ポワロはシメオン・リーと名乗る老人の自邸に呼び出される。シメオンは家族に不和の種をまいて楽しんでいたが、その夜、喉を切られて殺されてしまった。犯人は家族のだれかだろうか?
クリスマス・ストーリーだが依頼人は性悪、家の中はギスギス、ポワロとジャップの関係も微笑ましいとはいえず、微妙な気持ちになる。動機はいいが、鍵を掛けたのは不自然。
ヒッコリー・ロードの殺人
ミス・レモンが仕事でミスをした。驚いたポワロが訊ねると、姉(ハバード夫人)が管理人をしている学生寮で次々に妙なものが紛失していると言う。興味をもったポワロは学生寮に出向き、学生たちに警告を与えるが...
犯人はポワロの警告を無視して、犯罪をつづける。ポワロは独力で犯人を特定できず、偶然に助けられる。カタルシスに乏しい展開だ。レモン姉妹の出番も足りない。
ゴルフ場殺人事件
富豪のルノー氏が殺害され、ポワロは事件解決をジロー警部と競うことに。一方、ヘイスティングスはホテルで一人の女性と知りあっていた。
ヘイスティングスの恋物語はさっぱり描写されず。ジロー刑事の挑戦に、ポワロは向き合わないことも釈然としない。偶然が多い事件はしらける。
もの言えぬ証人
親族の誰かが自分の命を狙っていると感じた老婦人エミリーは、ポワロの助言を容れて遺言状を書き換える。間もなく彼女は死に、遺産はすべて話し相手のウィルミーナへ。奇妙に感じるが、事件を目撃していたのは飼い犬のボブだけだった。
死因が特定されないため、推理を組み立てにくい。オカルト老姉妹が印象的だった。

Series 7 (2000)

アクロイド殺人事件
人間がいやになったポワロは引退し、田舎でカボチャを作っていた。その地元で殺人事件が発生し、ジャップ警部がやってくる。警部はポワロを引っ張りまわり、復帰をうながす。ロンドンでかつての事務所を訪れたポワロは、復帰を決意する。
完全犯罪だったのに、べらべら真相をしゃべりだす犯人に唖然。ぶっちゃけ、事件はどうでもよかった。
エッジウェア卿の死
エッジウェア卿は黒い帽子の女に刺殺される。妻であり、女優のジェーンの犯行と思われたが、彼女には完ぺきなアリバイがあった。
女優さんに華がない。事件解明より、4人組の再結成が見どころ。

Series 8 (2001-02)

白昼の悪魔
リゾート地で静養するポワロ。滞在客のひとり、元女優のアレーナ・スチュアートが殺された。立地的に外部の人間の犯行とは思えないが、滞在客にはアリバイがあった。
養生に堪えかねガツガツ食べるポワロなど、事件に関係ないところが楽しい。
メソポタミア殺人事件
ヘイスティングスの滞在するメソポタミアの遺跡発掘現場を訪れたポワロ。発掘隊には不穏な空気が漂い、事件事故が多発。そしてライドナー夫人が殺害される。
密室殺人なのにハウダニットを追わないなんて。

Series 9 (2003-04)

五匹の子豚
ポワロはルーシーという女性に依頼され、14年前の殺人事件を再調査することに。ルーシーの母キャロラインは、芸術家である夫アミアスを毒殺したことで有罪となり、死刑が執行されていた。キャロラインが犯人でないなら、なぜ法廷で争わなかったのか。またキャロラインが犯人なら、なぜ娘への手紙で潔白を訴えたのか? ポワロは5人の関係者を訪ね、その証言から真相を探っていく。
「回想の殺人」の最高峰。セピアトーンと、けだるいジムノペディが印象的。
杉の棺
エリノアはロディと婚約していたが、ドイツから帰国した幼なじみのメアリに奪われてしまう。エリノアはメアリを憎むようになる。メアリはエリノアが作ったサンドイッチを食べて死んだ。警察はエリノアを逮捕。ポワロの目にもエリノアは有罪に見えた。
ポワロの友人であるロード医師の態度や、メアリの人物像が不明瞭なことが、ミステリーを盛り上げている。
ナイルに死す
ナイル川のクルーズ船で、若き資産家リネット・リッジウェイが射殺された。前夜、リネットの親友ジャクリーンは、リネットに乗り換えた恋人サイモンに怒り、発砲する騒動があった。犯人は混乱に乗じてリネットを撃ったようだが、調べてみると乗客全員に動機があった。
登場人物が多い。さしたる出番もないまま退場させるなら、省いちゃえばいいのに。
ホロー荘の殺人
ホロー荘を訪ねたポワロが見たのは、殺人事件の現場だった。お芝居だろうと思っていたが、男はほんとうに死にかけていて、奇妙なことを言い残した。
謎解きがあって、はじめて事件の疑問点がわかった。嫌悪感はあったが、奇妙に感じなかった。なるほど。

Series 10 (2006)

青列車の秘密
大富豪令嬢ルースがブルートレインの車内で殺され、携えていた有名なルビーが消えた。同じ列車には被害者と関係の深い人間が多数乗り合わせていた。
「プリマス行き急行列車」の焼き直し。登場人物が増え、尺が長くなったが、切れ味はにぶっている。ポワロの注目点がわからないため、ピンぼけしたまま終わった。
ひらいたトランプ
資産家シェイタナのパーティーに招待されたポワロ。そこには探偵チーム4名と、殺人を犯しながら逃げおおせた犯人チーム4名がいて、ブリッジを楽しんでいた。ポワロが帰ろうとすると、シェイタナは何者かに刺し殺されていた。
シェイタナの行動が理解不能。
葬儀を終えて
資産家リチャード・アバネシーが死んだ。遺言公開の席上、リチャードの妹コーラが「兄さん、本当は殺されたんでしょう?」と言い出す。そのときは相手にされなかったが、翌日、コーラの死体が見つかったことで一族は騒然となる。コーラはなにを知っていたのか?
ポワロに気づかれたことが、犯人にとって誉れになりますように。
満潮に乗って
爆発事故で資産家ゴードン・クロードが死んで、若妻ロザリーンが遺産を相続した。ロザリーンの兄デビッドは遺産を厳しく管理。ゴードンの資金援助に頼っていた一族と対立する。やがて、ロザリーンの前夫の友人と言う男があらわれ、前夫は生きている(ゴードンとの結婚は無効)と言って、デビットを脅迫する。翌日、その男の死体が発見され、デビットに疑惑が向けられる。
生意気なデビットを、ポワロがどうやって吊るすか楽しみに見ていたが、それこそミスリードだった。これも3回は見ないと要点がわからない。

Series 11 (2008-09)

マギンティ夫人は死んだ
マギンティ夫人という掃除婦が殺害され、間借人のベントリーを逮捕された。ベントリーは有罪となり、死刑を待つばかり。しかしスペンス警視は捜査に納得しておらず、ポワロに再調査を依頼する。
はじめて見たときはベントリーの愚鈍さに驚かされた。不自然に思えたが、愚鈍であればこそ利用されたわけで、納得した。事件そのものは退屈で、集中力を失った。アンジェラ・ランズベリーの「ミス・マープル/最も卑劣な殺人」(1964)はよくまとまっていた。
鳩のなかの猫
名門女子校メドウバンク学園を訪れたポワロは、旧知のバルストロード校長から後継者について相談され、しばらく学園に留まることに。そんな中、中東のラマット国で起きた革命に関係があるとおぼしき事件が立て続けに発生する。
学園の内情は期待するほど描かれる、まんぜんと見てしまった。しかし事件そのものより、事件解決が先生と生徒に与えた影響に興奮した。
第三の女
若い娘ノーマがポワロの事務所を訪ね、人を殺してしまったかもしれないと訴える。詳しい話を聞こうとするが、ノーマは帰ってしまった。後日、ノーマが住むマンションで死体が見つかった。
にぶい人は攻撃されていることに気づかない。ポワロの涙は脈略がない分、リアルだった。
死との約束
ポワロはシリアを旅行中、遺跡を発掘調査するポイントン一家と知り合う。父親は調査に夢中で家族を顧みず、母親は尊大で子どもたちを支配していた。その後、夫人が何者かに刺殺される。
母親の虐待が陰惨で、見ていて気分が悪くなった。ポワロは犯罪を予見していたようだが、止めようとしたり、止めるべきかどうか迷った様子もない。まぁ、止めたところで解決しないけど。カタルシスがない。

Series 12 (2010-11)

三幕の殺人
引退した俳優カートライトが開いたパーティーの席上で牧師が変死した。ポワロは他殺説を支持しなかったが、後日、同じ状況でカートライトの友人である医師バーソロミューが変死。ポワロはカートライトともに事件を調査する。
1回目は意味がわからず、2回目でおもしろくなるが、3回目で辻褄が合わないことに悩む。犯人の動機と行動があってない。
ハロウィーン・パーティ
ハロウィーン・パーティーの席上、少女(ジョイス)が殺人を見たことがあると言い出した。そのときは誰も本気にしなかったが、その後、ジョイスは殺されてしまった。ジョイスはいつ、なにを見て、だれに殺されたのか?
ジョイスは嘘つきでも想像力はないから、元ネタがあったはず、という着眼点はおもしろかった。
オリエント急行の殺人
ポワロは中東での仕事を終え、オリエント急行で帰途についた。道中、乗客のひとりが刺殺される。大雪のため汽車は立ち往生。外部の人間の犯行はありえない。しかし12人の乗客には全員アリバイがあった。
娯楽映画としては、アルバート・フィニー主演の「オリエント急行殺人事件」(1974)が頂点。それは変わらないが、一定以上のミステリーになじんだ人は、この重々しいアレンジに唸るだろう。登場人物、トリック、ストーリー展開、ポワロが下した結論も変わらないが、まるでちがう。ポワロがその結論に達することの意味を、それまで考えなかった自分を恥じる。しびれた。
複数の時計
MI6の諜報員であるコリンは、盗まれた機密を追ってドイツのスパイ(19号)の家の前にやってきた。すると若い娘(シーラ)が飛び出してきて、人が死んでいると言う。19号は殺されていた。第一発見者であるシーラが殺した可能性もある。コリンはポワロに調査を依頼する。
シーラの視点を描いちゃダメでしょ。

Series 13 (2013)

象は忘れない
オリヴァ夫人は、知人の娘から13年前の殺人事件についての調査を依頼される。要領を得ない話なので、ポワロに相談する。一方、ポワロはべつの事件を調査していた。
過去と現在、2つの事件が展開するが、最後に合流したり、解決のヒントになるわけでもない。過去の事件は、なにをどうすればいいのかわからず、まんぜんと見てしまった。全容がわかっても感心するところもない。印象が薄い。
ビッグ・フォー
ポワロの訃報が届き、ヘイスティングス大尉、ミス・レモン、ジャップ警視監が葬式に列席する。ポワロは「ビッグ・フォー」なる国際犯罪組織を追っていたが、爆弾で殺されてしまったのだ。怒ったヘイスティングスはビッグ・フォーの正体を暴いてやると飛び出していった。
ヘイスティングスは怒っても大したことない。
死者のあやまち
オリヴァ夫人に招かれ、ナス屋敷にやってきたポワロ。夫人は殺人が起こりそうだと言うが、根拠はない。しかし祭りの日、少女の死体が発見され、ナス屋敷の奥方ハティが行方不明になった。
直感にはじまり、直感に終わっちゃう。理性で解決してほしい。
ヘラクレスの難業
ポワロが私用でアルプス山中のホテルを訊ねた。そこは警察が凶悪犯マラスコー逮捕のため監視しているところだった。ポワロをのぞく宿泊客8名のなかには、かつての想い人、ロサコフ伯爵夫人もいた。
ロサコフ伯爵夫人の魅力が乏しい。嫌悪感しかない。
カーテン ポワロ最後の事件
ヘイスティングスはポワロの呼ばれ、スタイルズ荘にやってきた。老朽化したスタイルズ荘はホテルに改築され、多くの客が滞在している。この中に殺人犯がいるとポワロは言うのだが...
ヘイスティングスは気づいたか?

初期:短編がいい

やっぱり初期の短編がおもしろい。時間が経って思い出すのは、犯人やトリックではなく、レギュラーの掛け合いばっかり。原作を読むと、そうしたシーンはまったくない。原作が短くて、そっけないから、キャラクターの魅力で尺稼ぎしたようだが、大成功だ。

原作のポワロはいやな人物だが、デビット・スーシェのポワロはユーモラスで、親しみやすい。原作以上に原作らしい、新しいスタンダードを構築したと思う。あわせてヘイスティングス、ミス・レモン、ジャップ警部の人物造形も見直され、個性的になった。この4人組の魅力がなければ、こんな長寿シリーズにはならなかっただろう。

中期:惜しまれる迷走

しかしレギュラーの扱いは粗雑になっていく。総じて出番が減って、ヘイスティングスはただの無能に、ミス・レモンはオカルト色が消え、ジャップ警部は文化のちがいでギスギスする。後半に登場するオリヴァ夫人、執事ジョージ、ロサコフ伯爵夫人は人物造形がはっきりせず、好感を持てない。
スタッフが変わったことが、如実にわかる。むしろこの4人を軸に物語を再構築すべきだった。作り直してほしいエピソードが多いが、役者さんが年をとってしまった。もう無理だ。

後期:老いゆく名探偵

高齢化するキャストたち。しかし物語は、老いゆく名探偵の悲哀を描きこんでいく。「第三の女」で見せた涙もそうだが、転機になったのは「オリエント急行の殺人」だろう。ポワロは自分を知らない若者に出会っても、怒らなくなった。以前より犯罪者の心情に寄り添う演出が増えた。そうした積み重ねの先に、「カーテン」があった。

「カーテン」を見終えたあとで初期作品を見ると、ポワロが若者に見える。自分の能力を信頼し、法の正義を掲げ、人々の喝采を浴びて、向かうところ敵なし。万能感に酔いしれているようだ。その若さが愛おしく思える。
振り返れば、名探偵の人生を描ききったシリーズだった。

エピソードをつまみ食いすると、こうした変化がわからず、戸惑うかもしれない。そういう意味では、リアルタイムで視聴できたのは幸いだった。過去作品を見ると、まだ高校生だったり、社会人になったばかりの自分を思い出せるのだから。

アガサ・クリスティ
ポワロ
デビット・スーシェ (David Suchet) デビット・スーシェ (David Suchet)
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov)
声:里見浩太朗 声:里見浩太朗
  • アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル
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  • エンドハウス怪事件
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  • 雲の中の死
ポワロ
ミス・マープル
マーガレット・ラザフォード (Margaret Rutherford) マーガレット・ラザフォード (Margaret Rutherford)
アンジェラ・ランズベリー (Angela Lansbury) アンジェラ・ランズベリー (Angela Lansbury)
ヘレン・ヘイズ(Helen Hayes) ヘレン・ヘイズ(Helen Hayes)
ジョーン・ヒクソン (Joan Hickson) ジョーン・ヒクソン (Joan Hickson)
ジェラルディン・マクイーワン (Geraldine McEwan) ジェラルディン・マクイーワン (Geraldine McEwan)
ジュリア・マッケンジー (Julia McKenzie) ジュリア・マッケンジー (Julia McKenzie)
声:八千草薫 声:八千草薫
ゆっくり文庫 ゆっくり文庫
ほか
奥さまは名探偵
ほか そして誰もいなくなった 検察側の証人 ほか

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