レビュー  2010年01月03日  に発表された 

三幕の殺人 / 名探偵ポワロ #62 (デビット・スーシェ主演)
Three Act Tragedy (Agatha Christie's Poirot #62)

3ツ星

動機がへんじゃない?

舞台劇のような演出がちょこちょこ入るが、徹底されてない。なんとも中途半端。構成を整理して、舞台劇に仕上げちゃえばいいのに。

今回も登場人物が多く、それぞれを疑わしく見せようとするため、状況把握が難しい。ポワロがいない場面が入るのも、混乱に拍車をかける。
4回見てトリックは理解できたが、動機がわからない。殺人のリハーサルなんて意味あるの? 本番とは状況がちがうじゃん。連続殺人と思わせたいなら、パスポートでアリバイが崩れるのもお粗末。
ストレンジ医師がカートライトの変装に気づきながら、それを黙っていた理由もわからない。カートライトの殺意に気づいておらず、その変装が「みんなを驚かせること」だったのか? だとしたらカートライトとストレンジ医師が悪戯を企むシーンを挿入してほしい。オリバーに事故を偽装させる意図もわからない。言うほど疑惑が高まってないからだ。

もっとも不可解なのは、患者ラッシュブリッジャーを殺害したこと。ポワロは「執事エリスは殺された」と推理していたのだから、新たな犠牲者を出す必要はない。しかも手紙を出したことで、ポワロに正体を見破られている。
そもそも毒入りチョコで入院患者を殺せるなら、本当の妻を始末すればいいのだ。3人殺すより確実じゃないか。

劇作家アスター(ミュリエル・ウィルズ)に疑惑を向けたかったようだが、それなら「アスターの姿が見えない」「ポワロの名を騙った犯人に呼び出された」と騒ぐシーンがあるべきだろう。
謎解きも早い段階でカートライトの名前が出ちゃうから、エッグはずっと怯えっぱなし。疑問点を1つずつクリアして、最後の最後に正体がわかるカタルシスもなかった。

ただ、カートライトに「くたばれ」と言われ、ポワロがびくっとなるのはよかった。ポワロはカートライトを友人ではなく、なにをするかわからない異常者と見ていることが露見するシーンだった。

あらすじ

第1幕

パーティーの席上で牧師が死亡する。だれがどのグラスを取るかわからない状況で、グラスに毒は検出されず、牧師を殺す動機も考えられない。ポワロは事件性はないと断ずるが、カートライトとエッグは独自に捜査をはじめる。

  1. カートライト ... ホスト。引退した俳優。ポワロの友人。
  2. ポワロ ... 名探偵。
  3. ストレンジ ... 著名な精神科医。
  4. エッグ ... カートライトの友人。美しく、好奇心旺盛なお嬢さん。
  5. メアリー ... エッグの母。
  6. バビントン ... 地元の牧師。
  7. バビントン夫人 ... バビントン牧師の妻。
  8. デリク大尉 ... 大尉。
  9. シンシア ... デリクの妻、ドレスメーカー。
  10. アスター ... 女性劇作家。
  11. オリバー ... エッグの友人。
  12. ミルレー ... カートライトの秘書。

第2幕

1か月後。ストレンジ医師がカートライトとポワロ以外のメンバーを招いてパーティーを開催する。その席上でストレンジが死亡。死因はニコチン中毒。グラスから毒物は検出されなかったが、牧師と同じ死に方だったため、ポワロも殺人の可能性を認める。

第一の容疑者は事件直後に姿を消した執事のエリス。彼はだれかを恐喝していたようだ。犯人はストレンジ医師を毒殺するつもりだったが、まちがって牧師を殺したのか? しかしストレンジ医師はカクテルを飲まない。

ポワロがシェリーパーティーを開催する。席上、カートライトが突然倒れる。エッグはポワロをなじるが、カートライトの演技だった。ポワロは、毒入りグラスを取り替えることが可能だと証明した。
またポワロは、カートライトが倒れたときの、ある人物の反応を観察したが、その名前は伏せられた。牧師を殺害した動機がわからないためだった。

ポワロのもとにストレンジ医師の患者であるラッシュブリッジャーから手紙が届く。訪問すると、毒入りチョコレートで殺害されたあとだった。なぜラッシュブリッジャーは殺されたのか?
ポワロは関係者を劇場に集め、謎解きする。

第3幕

犯人はカートライト。カートライトはエッグと結婚するため、若かりし日に結婚した事実を伏せたい。過去を知る親友ストレンジ医師を殺害すべく、執事として潜入し、毒を混入した。牧師の殺害はリハーサルだった。ラッシュブリッジャーの殺害は偽装工作。
ポワロは、自分も毒入りグラスを飲む可能性があったことに戦慄する。

米版と英版で異なる動機

後日、ピーター・ユスティノフ版『死者のあやまち』(1986)を鑑賞し、動機がちがっていることに驚いた。どうやらアメリカ版とイギリス版で動機が異なるようだ。なぜクリスティは動機を差し替えたのか、確たる理由はわかっていない。思いっきりネタバレになるが、書き出しておく。

アメリカ版 イギリス版
原題 Three Act Tragedy Murder in Three Acts
邦題 三幕の悲劇 三幕の殺人
出版 1934 1935
書籍
動機 狂気:芸能界に復帰するため、自分の狂気を知っている医者を取り除く。 愛情:エッグと結婚するため、自分の結婚歴を知っている医者を取り除く。
映像化
ユスティノフ版「三幕の殺人」(1986)

スーシェ版「三幕の殺人」(2000)

圧倒的にユスティノフ版の方がおもしろい。オチだけでなく、キャラクターやドラマもよかった。興味ある方はぜひ見比べてほしい。


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三幕の殺人 / 名探偵ポワロ #62 (デビット・スーシェ主演)