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[レビュー1986年09月30日に発表された 

三幕の殺人 / 名探偵ポワロ (ピーター・ユスティノフ主演)

Murder in Three Acts

おもしろいし、こわかった!

あらすじ

引退たポワロはヘイスティングスに招かれ、同じく引退した俳優カートライト氏のパーティーに出席する。その席上で、カクテルを飲んだ牧師が死亡。ポワロは自然死を支持するが、若い娘・エッグは異を唱え、独自に調査をはじめる。

その2週間後、ストレンジ医師がパーティーを開催し、医師が死亡。ポワロとカートライトがいないことを除けば、牧師が死んだ夜と同じメンバーだった。検死の結果、ベンゾチン中毒と判明する。ポワロは連続殺人として調査に乗り出す。

ドラマについて

ポワロとヘイスティングスの掛け合いが楽しい。ポワロが回顧録を書いてると聞いて、「ノルマンディーの出来事は書かないよね?」「ぼくの家族も読むんだから」と焦るヘイスティングス。なんのことか思い出して、「真実は万事に優先されなければなりません」と意地悪するポワロ。開始3分で、もう楽しい。

5分経過したところでエッグが運転する車と衝突しそうになる。まさに衝撃の出会い。若くて、かわいくて、小柄で、好奇心旺盛なエッグが、重要人物として記憶される。エッグに帽子アリとナシでどっちがかわいいか問われ、ポワロとヘイスティングスで別々の答えをするところがたまらない。ぴったり息が合うとは、こーゆーことを言うのだろう。

牧師が殺害されたとき、ポワロはこっそり毒物を検査した。エッグは疑問を口にして、この中に殺人犯がいるという疑念が顕在化する。若さゆえの配慮不足。いいねぇ。
どうでもいいことだが、ポワロは電話にでるとき「パロー」というのは、「ハロー」と「ポワロ」を掛けているんだろうか?

ミステリーについて

そこかしこにヒントが散りばめられている。ポワロは牧師ではなく医師を狙うなら動機は山ほどあるといい、「ストレンジ医師は社会不適応と診断した患者を隔離できましたから」と言うが、まさしくこれが動機だった。エッグが劇作家を疑うとき、「天才と狂人は同類よ」と言う。これもヒント。うまい。

スーシェ版では疑問だった精神病患者の存在も理解できた。最初は意味のない電話連絡だったが、医師が日記に「M」のことを書いていたことから、たまたま同じイニシャルの患者を毒殺することで、さも秘密を知りすぎたため殺されたように見せかけたのか。なるほど。精神病院にポワロが行かなかったとき、なんとなくカートライトが不機嫌なのも納得できる。

下記の会話でタイトル回収するのもうまい。

「なぜすべて見たかのように話せるんだ?」
「第一幕だけ見て舞台の批評が書ける評論家と同じです」
「ふふふ」
「ただ完ぺきを期すため、第三幕に立ち会うんですよ」

アメリカ版の動機

視聴後に調べてわかったのだが、「三幕の殺人」は米版と英版で動機が異なっていた。スーシェ版は英版を、ユスティノフ版は米版の動機を採用している。スーシェ版のレビューにも書いたが、圧倒的に米版の動機の方が納得できる。

アメリカ版 イギリス版
原題 Three Act Tragedy Murder in Three Acts
邦題 三幕の悲劇 三幕の殺人
出版 1934 1935
書籍
動機 狂気:芸能界に復帰するため、自分の狂気を知っている医者を取り除く。 愛情:エッグと結婚するため、自分の結婚歴を知っている医者を取り除く。
映像化 ユスティノフ版「三幕の殺人」(1986) スーシェ版「三幕の殺人」(2000)

演出もよかった。
正体を暴露されても演技を辞めないカートライトに、ポワロは恐怖する。急に腕を掴まれたときは、見てるこっちも身体がビクッとなった。つづくカートライトのセリフ。実際、彼は専門家であるストレンジ医師を完全に騙しているのだ。

「どこに入れられようと、1年で出てやる。
 模範的な患者を演じてやるさ。論理的に正しい行動だけする。」
(ポワロ、怯えながら)
「よろしい」
(カートライト、警察に向かって)
「抵抗する気はない。拘束服や鎮静剤は使わないでくれ。
 言っておこう。
 ぼくは魅力にあふれ、時として危険な男になるが、
 狂ってはいない!」
(言葉を失う客たち、カートライト退場)

比較して

「愛情」という動機も悪くはない。スーシェ版の、スポットライトを離れた有名俳優が寂しさから若い娘との結婚を求める姿は切なかった。しかし3つの殺人を実行する動機としては、「狂気」の方がふさわしい。

謎解きのわかりやすさ、インパクトも、ユスティノフ版がいい。ただ、カートライトの正体を知らされても、客たち(女性ばかり)の反応が乏しい。エッグもカートライトを特別愛していないため、あっさりしてる。このへんは、スーシェ版の方がいい。

またスーシェ版のポワロはカートライトと親友同士だったため、親友に毒殺される可能性があったことは衝撃的だった。ユスティノフ版にも同じシーンがあるが、「危なかった」以上の感慨はない。

ユスティノフ版のポワロは、最初から最後まで回顧録の執筆に悩んでいた。ラストで劇作家に共著を持ちかけるが、そこはやっぱりヘイスティングスと書いてほしかった。ヘイスティングスはずっとメモをとっているから、最適だと思うんだけどなぁ。

わずかに気になる点はあったが、全体的な満足はきわめて高い。こういう脚本を書けるようになりたいなぁ。

アガサ・クリスティ
ポワロ
デビット・スーシェ (David Suchet) デビット・スーシェ (David Suchet)
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov)
声:里見浩太朗 声:里見浩太朗
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声:八千草薫 声:八千草薫
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