クリスタル殺人事件 The Mirror Crack'd
1980年 外国映画 4ツ星 探偵 推理 @アガサ・クリスティエリザベス・テーラーが強烈
あらすじ
映画女優マリーナの歓迎パーティで、村の女性が毒殺された。マープルは、犯人の真の狙いはマリーナではないかと推理するが...
ヒクソン版(1992)を見ていたから、ストーリーを踏まえ、マリーナの心中を察することができた。筋書きを知っていても楽しめるのは見事。
ざっくり述べると、エリザベス・テイラーが強烈。まさに往年の大女優。目に力がある。そして磁場がある。テイラーがなにかすると、客たちが振り返る。表情が凍りつくと、みんなで静まり返る。演出がうまい。パーティ会場、撮影現場、プライベートで雰囲気が変わるのもいい。クラドック警部と映画の話で盛り上がるところは、本気かどうかわからないがゆえ、目を話せなくなった。すごい。
ミス・マープルを演じるアンジェラ・ランズベリーは、きっつい印象。クラドック警部との交流は微笑ましいが、やはり冒頭でミステリーの犯人をバラしたのはまずい。タバコも吸う。柔和なおばあちゃん探偵を期待すると、がっくりする。4年後にスタートする『ジェシカおばさんの事件簿』で、かなり丸くなる。
マープルを年寄り扱いするナイトはおらず、メイド(チェリー)との関係も良好で、老いを感じさせる演出はない。なので事件の調査は老いへの抵抗ではなく、趣味となっている。
当然、マープルとマリーナの対決を期待するが、2人は対面することなく終わってしまう。初見では、かなり拍子抜けした。とはいえマープルはずっと遠隔で推理していたので、現場に乗り込むことにも無理がある。マリーナの罪を暴いたところで、あわれみ、寄り添うことはなかっただろう。マープルに老いがないから、マリーナとの対比できないのだ。
これはヒクソン版、マッケンジー版、日本版も同じ。難しいテーマなのだ。
それからヘザー・バブコック(バドコック)がけっこう印象的。ひたすら能天気で、悪意のない加害者を公演している。これも、ほかの映像化に比べてよいところだ。
簡易裁判でヘザーの病歴に風疹があることが語られる。メイドの証言によって、マリーナが宗教画を見ていたことが最初に明かされるが、マープルは「絵は毎日見てるから、人を見てたでしょ」と訂正する。うまいな。テニスンの詩は重要なモチーフだが、顔を見ていなかったマープルが言及するのは、ちぐはぐな感じ。悲しい思い出として、スコーンではなく、自殺に使った氷の話が出てくる。突拍子もない。
とにかくエリザベス・テイラーがすごかった。それに尽きる。
- 1980 クリスタル殺人事件 (アンジェラ・ランズベリー 主演)
エリザベス・テイラーの演技に圧倒される。まさに往年の大女優。
- 1992 鏡は横にひび割れて (ジョーン・ヒクソン 主演)
シリーズ最終回として、マープルの老いが描かれる。マレーナは頑張っているが、まだ足りない。
- 2011 鏡は横にひび割れて (ジュリア・マッケンジー 主演)
クラドック警部の代わりにバントリー夫人が相棒に。マレーナが傲慢すぎて、さっぱり同情できない。
- 2018 大女優殺人事件 鏡は横にひび割れて (黒木瞳 主演)
大女優が複雑な人物として描かれるが、探偵が事件以外に興味を示さず、なにも響かない。
アガサ・クリスティ | |
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ポワロ | |
デビット・スーシェ (David Suchet) | |
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) | |
声:里見浩太朗
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ミス・マープル | |
マーガレット・ラザフォード | |
アンジェラ・ランズベリー | |
ヘレン・ヘイズ | |
ジョーン・ヒクソン | |
ジェラルディン・マクイーワン | |
ジュリア・マッケンジー | |
声:八千草薫
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ゆっくり文庫 | |
奥さまは名探偵 | |
ほか | |
検察側の証人 | |
そして誰もいなくなった | |
ほか |