レビュー  1980年12月19日  に発表された 

クリスタル殺人事件
The Mirror Crack'd

4ツ星

エリザベス・テーラーが強烈

あらすじ

映画女優マリーナの歓迎パーティで、村の女性が毒殺された。マープルは、犯人の真の狙いはマリーナではないかと推理するが...

ヒクソン版(1992)を見ていたから、ストーリーを踏まえ、マリーナの心中を察することができた。筋書きを知っていても楽しめるのは見事。

ざっくり述べると、エリザベス・テイラーが強烈。まさに往年の大女優。目に力がある。そして磁場がある。テイラーがなにかすると、客たちが振り返る。表情が凍りつくと、みんなで静まり返る。演出がうまい。パーティ会場、撮影現場、プライベートで雰囲気が変わるのもいい。クラドック警部と映画の話で盛り上がるところは、本気かどうかわからないがゆえ、目を話せなくなった。すごい。

ミス・マープルを演じるアンジェラ・ランズベリーは、きっつい印象。クラドック警部との交流は微笑ましいが、やはり冒頭でミステリーの犯人をバラしたのはまずい。タバコも吸う。柔和なおばあちゃん探偵を期待すると、がっくりする。4年後にスタートする『ジェシカおばさんの事件簿』で、かなり丸くなる。
マープルを年寄り扱いするナイトはおらず、メイド(チェリー)との関係も良好で、老いを感じさせる演出はない。なので事件の調査は老いへの抵抗ではなく、趣味となっている。

当然、マープルとマリーナの対決を期待するが、2人は対面することなく終わってしまう。初見では、かなり拍子抜けした。とはいえマープルはずっと遠隔で推理していたので、現場に乗り込むことにも無理がある。マリーナの罪を暴いたところで、あわれみ、寄り添うことはなかっただろう。マープルに老いがないから、マリーナとの対比できないのだ。
これはヒクソン版、マッケンジー版、日本版も同じ。難しいテーマなのだ。

それからヘザー・バブコック(バドコック)がけっこう印象的。ひたすら能天気で、悪意のない加害者を公演している。これも、ほかの映像化に比べてよいところだ。

簡易裁判でヘザーの病歴に風疹があることが語られる。メイドの証言によって、マリーナが宗教画を見ていたことが最初に明かされるが、マープルは「絵は毎日見てるから、人を見てたでしょ」と訂正する。うまいな。テニスンの詩は重要なモチーフだが、顔を見ていなかったマープルが言及するのは、ちぐはぐな感じ。悲しい思い出として、スコーンではなく、自殺に使った氷の話が出てくる。突拍子もない。

とにかくエリザベス・テイラーがすごかった。それに尽きる。

1980 クリスタル殺人事件 (アンジェラ・ランズベリー 主演)

エリザベス・テイラーの演技に圧倒される。まさに往年の大女優。

1992 鏡は横にひび割れて (ジョーン・ヒクソン 主演)

シリーズ最終回として、マープルの老いが描かれる。マレーナは頑張っているが、まだ足りない。

2011 鏡は横にひび割れて (ジュリア・マッケンジー 主演)

クラドック警部の代わりにバントリー夫人が相棒に。マレーナが傲慢すぎて、さっぱり同情できない。

2018 大女優殺人事件 鏡は横にひび割れて (黒木瞳 主演)

大女優が複雑な人物として描かれるが、探偵が事件以外に興味を示さず、なにも響かない。


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