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[レビュー2001年04月20日に発表された 

白昼の悪魔 / 名探偵ポワロ#48 (デビット・スーシェ主演)

Evil Under the Sun / Agatha Christie's Poirot #48

複雑にすればいいってわけじゃない

プロット

ポワロとヘイスティングスは南海岸の島にあるホテルに静養にやってきた。島の浜辺で、滞在客で元女優のアレーナ・スチュアートが殺された。立地的に外部の人間とは考えられない。ホテルの滞在客が疑われるが、全員にアリバイがあった。

ピーター・ユスティノフ主演の『地中海殺人事件』(1982)に続く、2度目の映像化。比べると、ユスティノフ版の方が格段におもしろい。この事件の特徴は、容疑者全員にアリバイがあること。犯人がウソをつくのは当然だが、犯人のアリバイを証明した人物はなぜウソをついたのか? スーシェ版は、この視点がすっぽり欠けている。
代わりに容疑者と、無関係な出来事を増やしているが、複雑にすればおもしろくなるわけじゃない。

  1. アレーナ・スチュアート ... 被害者。元女優。マーシャル大尉の妻だが、男好き。扼殺される。
  2. ケネス・マーシャル ... 大尉。殺害時刻は部屋でタイプライターを打っていた。
  3. ライオネル・マーシャル ... ケネスと先妻の息子。毒物の本を読んでいた。殺害時刻、クリスティーンといっしょだった。事件現場に彼の眼鏡が落ちていた。
  4. パトリック・レッドファーン ... アレーナの友人であり、公然と逢引していた。死体の第一発見者。
  5. クリスティーン・レッドファーン ... パトリックの妻。事件当時はライオネルといっしょだった。
  6. ロザモンド・ダーンリー ... マーシャル大尉、ポワロの旧友。殺害時刻はテニス中。
  7. エミリー・ブルースター ... 自転車旅行中の滞在客。アレーナのせいで大損害を受けた。何者かに瓶を投げられる。パトリックといっしょに死体を発見した。
  8. スティーブン・レーン ... 牧師。白昼に悪魔がいると断言する。たくさんの瓶をもち、モルヒネを常用していた。殺害時刻は本土にいた。
  9. バリー ... 少佐。ポワロに島を去るよう警告する。
  10. ホレース・ブラット ... 滞在客。麻薬取引していた。

スーシェ版では、アリス・コリガン事件の関係者である牧師(スティーブン・レーン)が「白昼に悪魔がいる」と訴えるが、彼自身は犯人を識別しておらず、ただの世迷い言だった。それじゃ登場させる意味ないじゃん! 同じくアリス・コリガン事件の第一発見者を彷彿させる自転車旅行中の女性客(エミリー・ブルースター)を登場させているが、類似が指摘されることもない。ヘロイン密輸にまつわる登場人物(バリー少佐、ホレース・ブラット)もまったく不要。尺稼ぎでしかない。

スーシェ版が優れているのは、「アレーナが事前の取り決めによって洞窟に隠れた」ところくらいかな。

不可解な動機

アレーナ殺害の動機は「詐欺によって全財産を奪ったことが露見するのを防ぐため」とされるが、劇中でも言ったように、アレーナ殺害によって詐欺が露見したわけで、本末転倒だ。パトリックとして姿を消せば済むことなので、アレーナ殺害はまったく意味がない。

事件前夜、アレーナは不明な人物(ネイサン・ロイド?)から電話を受けているが、内容がわからない。すでにパトリックに全財産を託しているなら、手付金を払うこともできなかったはず。財政状況の逼迫を知らされれば、パトリックを疑うか、マーシャル大佐に相談したはずだが、アレーナの態度に変化はない。だったらなぜ、こんなシーンを挿入したのか?

私ならこうする。予想外の出来事からアレーナは詐欺の可能性に気づき、パトリックを問いただす。パトリックは詳しく説明すると言って、アレーナをピクシー・コーヴに呼び出す。切迫した状況だったから、絶海の孤島という隔離空間なのに犯行に及んだ。また証拠になる瓶を投げたり、ホテルで風呂に入ったのも、これで説明できる。もちろん、これですべてを説明できるわけじゃないが(汗)。

キャラクターは素晴らしい

しかしスーシェ版には、キャラクターの魅力がある。原作に登場しないヘイスティングス、ジャップ警部、ミス・レモンがよく動くこと。とりわけミス・レモンは、ポワロの肥満を厳しく指摘し、いやがるポワロを静養させ、ヘイスティングスに監視させる。事件発生後は別行動で調査し、謎解きの場に駆けつける。ミス・レモンのとぼけた有能さが好きなのよね。

またポワロも、蕁麻ジュースにスチームバスと苦難がつづく。本土でむしゃむしゃ料理を食べるシーンは、ストーリー上はまったく必要ないが、おもしろい。ヘイスティングスはいつもどおり無能で、またもや大金を損してる。ジャップ警部も事件の緊張感を高めてくれた。ほんと、いいキャラクターたちだ。

あと本編に関係ないが、海を渡るバス「Sea tractor」がおもしろかった。

Sea tractor
※海を渡るバス「Sea tractor」 Burgh Island Hotel

「死体が発見された時刻よりあとに殺された」というトリックは、ミス・マープルの短編「クリスマスの悲劇」でもあった。なるほど、いろんな応用ができそうだ。たぶんトリックや情景描写が先にあって、それから動機を考えたんだろうな。

アガサ・クリスティ
ポワロ
デビット・スーシェ (David Suchet) デビット・スーシェ (David Suchet)
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov)
声:里見浩太朗 声:里見浩太朗
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声:八千草薫 声:八千草薫
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