そして誰もいなくなった (ルネ・クレール監督) And Then There Were None

1945年 外国映画 4ツ星 サスペンス 密室 殺人鬼 @アガサ・クリスティ

映像化のお手本

最初の映画化作品。小説ではなく戯曲をベースにして、きちんと謎解きして、ハッピーエンドにもっていく演出は、本作によって確立されたと思う。コミカル演出もいいアクセント。殺される前に罪を認めるシーンがあるのはいいね。それからラストの警告は正しいのか否か。もっと描いてほしいが、そうすると後味が悪くなるから、このくらいがちょうどいいのかもしれない。
多くの映像化作品があるが、もっともスタンダードで、かつ楽しめるのは本作だと思う。

あらすじ

大好きな作品なので、ストーリーを詳細に書き出しておく。いずれ【ゆっくり文庫】版を制作したい。ネタバレどころじゃないので、未見の方は読まないのように。

1日目:夜:食堂:残り10名

 インディアン島の屋敷に10名の男女が集められた。彼らは互いに面識がなく、また招待者のオーエン氏に会ったこともなかった。オーエン氏が姿を見せぬまま、晩餐会がはじまる。食卓に10体のインディアン人形があったことから、「十人のインディアン少年」の話題が出る。彼らも10人であり、それぞれの客室にも歌詞が飾られていたからだ。
 食後、《歌手》がロビーにあるピアノを弾きながら歌ってくれた。

十人のインディアンが食事に出かけ、一人が咽喉(のど)をつまらせ、九人になった。
九人のインディアンが夜更かしして、一人が寝過ごし、八人になった。
八人のインディアンはデヴォンを旅して、一人がそこに残り、七人になった。
七人のインディアンが薪割りして、一人が自分をふたつに割って、六人になった。
六人のインディアンが蜂の巣をいたずら、一人が刺されて、五人になった。
五人のインディアンが法律に勉強、一人が裁判所に入って、四人になった。
四人のインディアンが海へ行き、一人が燻製ニシンに呑まれて、三人になった。
三人のインディアンは動物園へ行き、大きなクマが一人を抱きしめ、二人になった。
二人のインディアンが日向ぼっこ、一人が日干しになって、一人になった。
インディアンは一人だけになり、彼が首をくくり、あとには誰もいなくなった。

歌が終わるとオーエン氏の声が響き渡り、10名の客が殺人犯であると告発する。

  • 将軍 ... 妻の愛人メイスフィールドを死地へ追いやった。
  • 老婦人 ... 甥のピーターを死に追いやった。
  • 医師 ... 泥酔し、患者のクリース夫人を死なせた。
  • 歌手 ... フレッドおよびルーシー・マーロウを殺害。
  • 秘書 ... 姉の婚約者バークレイを殺害。
  • 判事 ... 敵からシートンを絞首刑に処した。
  • 大尉 ... 東アフリカの住民21人を死に至らしめた。
  • 探偵 ... 偽証によりランダーを死刑に追いやった。
  • 執事とメイド ... 元主人であるブレイディ夫人を殺害した。

 蓄音機にレコードを仕掛けたのは《執事》だが、オーエンの指示によるものだった。興奮した《メイド》が倒れ、《医師》が睡眠薬を処方する。《判事》が一人ずつ話を聞いてまわる。《医師》は「U.N.Owen」が「知られざる者」と読めることに気づく。客たちは島を出ようとするが、屋敷に電話はなく、月曜まで船は来ない。
 《歌手》はおどけて、自分の罪状を認める。途端、《歌手》が倒れて、死んだ。飲んでいた酒に毒が入っていたようだが、成分を分析することはできなかった。

二日目:朝 - 残り9人

 朝、食堂のインディアン人形が2体砕かれ、8体に減っていた。ほどなく《医師》が、《メイド》が心不全で死亡したを伝える。やはり詳しい死因は特定できない。罪の呵責から毒をあおったか、《執事》に口封じされたか、《医師》が毒をのませたのか? 10体のインディアン人形は、10人の客たちを暗示しているのか?

二日目:昼 - 残り8人

 《探偵》の提案で、島を探索することになった。オーエン氏、もしくは共犯者がどこかに隠れているかもしれない。《探偵》《大尉》《判事》《医師》の4人が探索するが、なにも見つからなかった。
 《将軍》は《秘書》に「船は永遠に来ない」とつぶやく。ぼけているのか、なにか知っているのか?

 午後から雨が降ってきた。《将軍》の姿が見えないと思ったら、鎌で刺殺されていた。これは明らかに殺人だ。食堂のインディアン人形も7体に減った。オーエン氏が客たちを処刑するつもりだ。《判事》は、オーエンは屋敷の中、残った客の誰かだと推理する。緊張が走り、雷鳴が轟く。

二日目:夕 - 残り7人

 《判事》は《医師》を疑う。有名な人物であっても、顔と名前が一致しない状況では警戒せざるを得ない。
 《秘書》は《医師》がもつ毒物の知識を疑う。
 《大尉》は《医師》はそれほど賢くないと切り捨て、《判事》の気質を疑う。
 《医師》と《判事》がそれに気づき、耳打ちする。
 《探偵》は《執事》の動向が気にかかる。
 《老婦人》は我関せず、編み物をつづけた。

 容疑者を絞るため、疑わしい人物を無記名投票する。大尉1票、探偵1票、医師1票、執事2票、老婦人1票、判事1票。《執事》は怒って酒をあおり、暴れる。

 夕食時、《執事》と《メイド》の共謀説が出てくる。食後、《老婦人》と《秘書》は部屋へ行こうとするが、言い争いになったため《大尉》と《探偵》が同行する。ロビーに残された《判事》と《秘書》は互いを牽制し、《執事》をあいだに挟む。3人なら安全だろう。《執事》は酔っていた。

 《大尉》と《探偵》が戻ってくると、泥酔した《執事》が薪小屋で寝ると言って、外へ出て行った。《探偵》がドアに鍵をかけるが、《判事》がそれでは足りないと食堂へ誘導、インディアン像が7体あることを確認してから、ドアに鍵をかける。その鍵を誰が保管するかでもめたが、薪小屋の《執事》に預けた。

三日目:朝 - 残り6人

 朝、薪小屋の近くで《執事》の死体が発見された。死体のポケットから鍵を取り出し、食堂のドアを開けると、インディアン像がまた1体砕かれていた。
 《判事》が状況をまとめる。犯人はこっそり外に出て、《執事》を殺し、鍵で食堂を開けて像を壊し、また鍵を死体に戻したのだろうと。屋敷から外へ出るのは簡単だし、斧を使えば女性でも殺害できる。
 早朝、海辺を散歩して海藻を持ち帰った《老婦人》に疑惑が向く。《老婦人》は取り合わないが、《秘書》にだけ、罪を間接的に認めた。

 食後、《老婦人》への疑惑が高まる。部屋に行って《秘書》が声をかけるが、反応がない。猫が毛糸の玉で遊んでいる。ドアを開けると、《老婦人》は死んでいた。窓に蜂が止まっていたが、首に小さな傷があり、注射器が転がっていた。それは《医師》の持ち物だった。《判事》と《医師》が駆け下りると、食堂のインディアン像がまた1体砕けていた。部屋の蜂は犯人の演出だろう。

三日目:朝 - 残り5人

 5人のだれかが犯人だ。《探偵》が《大尉》が銃を取り上げようとするが、すでに盗まれたと言う。
 《医師》と《判事》がビリヤードをはじめたので、《探偵》があきれる。《大尉》は《秘書》にふたりきりの危険性を説くが、《探偵》に見張りを依頼していた。

 電力供給がおかしくなり、《探偵》は薪小屋に様子を見に行く。《大尉》と《秘書》もやってきたが、3人一緒なら殺されないため、3人が薪小屋に留まる。発電機は壊れ、停電した。一方、屋敷では《医師》と《判事》のふたりが向き合っていた。互いに疑い、やがて融和していく。

 夕食時、《判事》が罪状を認める。つづいて《医師》も認める。《探偵》は事実を認めるが、殺意は否定した。《大尉》は否定しない。《秘書》は返答に窮し、上着をとりに部屋にもどった。安全のため一人で行かせたが、階上から悲鳴が聞こえたため駆け上る。蝋燭と懐中電灯を探したことで、全員がバラバラに。
 廊下に《秘書》が倒れていた。誰かに触られたと言うが、それは海藻だった。念のため確認するが《老婦人》は死んでいる。

 銃声。《判事》がいない。階段の下に《大尉》の銃が転がっていて、ロビーで《判事》の死体が見つかった。インディアン人形が4体に減っていた。

三日目:夜 - 残り4人

 《医師》は《秘書》の行動が不自然だったと指摘する。オーエンは正義を自負しているから、罪を犯していない者、すなわち《秘書》が怪しいと推理した。協議の結果、《秘書》の部屋は外から鍵をかけられた。これで安心して眠れるだろう。

 深夜、《秘書》の部屋の窓から《大尉》が忍び込んできた。犯人は《医師》か《探偵》のどちらかで、この部屋に来たところを迎え撃とうと提案する。しかし《大尉》がオーエンである可能性も捨てきれない。《秘書》は銃口を向けたまま、会話する。
 オーエンが告訴した《秘書》の罪は、姉が犯したものだった。オーエンはまちがえたのだ。《大尉》が自分のことを話そうとしたとき、階下から物音が聞こえた。
 調べると《医師》がいない。《大尉》はドアの鍵を開け、《探偵》を起こして調査に向かう。食堂のインディアン像は3体。すでに《医師》は殺されたのか、そう見せかけたか?

四日目:朝 - 残り3人

 夜が明けた。崖に人影を見えたので、《探偵》が双眼鏡をのぞく。何者かが2階から屋根瓦を落としたため、《探偵》は死亡。インディアン人形は2体になっていた。

四日目:朝 - 残り2人

 《大尉》と《秘書》が着替え、海辺へ向かう。そこには《医師》の死体があった。足あとがないことから、満潮になる前に突き落とされたようだ。とすれば《探偵》は犯人じゃない。
 《秘書》は《大尉》にピストルを向ける。《大尉》は弁明する。そもそも自分はロンバート大尉ではなく、友人のチャールズ・モーリーなのだ。招待状に興味をもって、この島にやってきたのだと。混乱する《秘書》に、《大尉》は自分を撃てと命じる。
 銃声。
 《大尉》が倒れる様子を窓から見ている人物がいた。インディアン像は1体になっていた。

四日目:朝 - 残り1人

 屋敷にもどると、ビリヤード室に《判事》がいた。謎解きがはじまる。
 《判事》は《医師》をそそのかし、協力者に仕立てた。海藻はふたりが仕掛けたもので、《秘書》が悲鳴を上げた。二階に行くと見せかけ、《判事》の死を偽装する。《医師》が確認したから、だれも疑わなかった。
 《判事》は自分の死期が近いことを知り、完璧な正義を実現したいと考えた。10人の死体とミステリーを残すことが、彼の目的だった。《秘書》には、首を吊って死ぬことをすすめる。満足した《判事》は毒をあおるが、そこへ《大尉》があらわれる。
 ふたりは互いを信じることができたと言う《大尉》に、《判事》はつぶやく。女を信じるなと。

 連絡船の船長がやってきて、ふたりは島を離れた。

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