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[レビュー1985年09月19日に発表された 

エッジウェア卿殺人事件 / 名探偵ポワロ (ピーター・ユスティノフ主演)

Thirteen at Dinner

殺人に慣れていく犯人

デビット・スーシェ版「名探偵ポワロ#47 エッジウェア卿の死」(2000)と比較するため鑑賞する。原題を直訳すると「晩餐会の13人」。言うほど13人はクローズアップされないが、しゃれたタイトルだ。本作にはデビット・スーシェがジャップ警部役で出演していた。辣腕でも愚鈍でも頑固でもなく、ふつーの警部だった。やっぱりジャップ警部はフィリップ・ジャクソン(声:坂口芳貞)のイメージが強い。
ピーター・ユスティノフが演じるポワロは、『死海殺人事件』(1988)を見ているが、本作でも女性のお尻を追っかけるなど、ちょいエロ中年という位置づけ。デビット・スーシェ版のような偏屈さはないが、プライドが高く、好々爺だけど油断できない。これはこれでいいポワロだ。
それからヘイスティングス(ジョナサン・セシル)も登場する。ポワロと年齢が近く、軽口を言い合って、とても仲がいい。基本的にぼんやりしているが、ポワロの推理をきちんと理解しており、それなりに有能。スーシェ版のヘイスティングス(ヒュー・フレイザー)とは異なるが、これはこれでいい。というか、こっちの方がいい。

Peter Ustinov and Jonathan Cecil
※ポワロ(ピーター・ユスティノフ)とヘイスティングス(ジョナサン・セシル)

ジェーンが魅力的

ジェーン・ウィルキンスン(フェイ・ダナウェイ)は美しく、甘えん坊で、強引で、悪人であることを隠しもせず、それでいて華があって、役のイメージぴったりだった。ポワロや多くの男たちが振り回されるのも無理はない。しかも振り回すことが目的だったらしく、最後のシーンに圧倒される。
カーロッタ・アダムズも二役で演じているため、ジェーンに化けても無理がない。当たり前だが、見分けがつかない。15年後のスーシェ版はなぜこのスタイルを踏襲しなかったのだろう?

推理の過程がわかる

スーシェ版に比べ、格段にわかりやすい。ポワロは場面ごとに推理を整理してくれるし、次の行動も明言する。たとえば、

  • ジェーンとエッジウェア卿で手紙のすれ違いが起こると、ポワロは4つの可能性を挙げる。
  • エッジウェア卿のメイドがジェーンを見たと証言すると、顔は見えなかったはずとその場で検証する。
  • 成りすましトリックの可能性をつぶやいたあとで、カーロッタが殺される可能性に気づく。
  • ポワロがいない場面は、証言者が語るまで伏せられている。
  • 「エッジウェア卿の死によって得する人物は?」と疑問を投げかけてから、聞き込みする。
  • カーロッタの手紙は、まず文面を読み、つづいて実物の手紙と過去の手紙を比較して、夜まで解析して手がかりを見つける。

金の薬入れがカットされたため、「5つの疑問」は言及されないが、すっきりしている。娘や甥、執事も登場はするが目立たないため、疑惑が散逸しない。これで十分成立するし、おもしろい。参考になる。お気に入りシーンを挙げておく。

カーロッタの死体を発見したポワロとヘイスティングス。
H「殺されたのか?」
P「最初の殺人では犯人も良心の呵責に苦しむが、2度目は楽になり、3度目はもっと楽にできる。世の中の常で殺人も習慣になるんだ」

これは、今後の展開を知っていると予言に等しい意味をもつ。

ポワロはカーロッタが投函した手紙を調べろとジャップ警部をせっつく。
P「カーロッタのことだよ」
J「大きな山を抱えてるんだ。そこまで手が回らん」
P「ブイヤベースでは、小魚に味わいがある」
J「何の話だ?」
P「大事なのはスープ全体。中身の大小など関係ない」

ドラマを左右するシーンじゃないけど、うまい言い回しだなと思った。

ピーター・ユスティノフのポワロはイメージとちがうと思っていたけど、がぜん興味が湧いた。ほかの作品も見てみよう。

アガサ・クリスティ
ポワロ
デビット・スーシェ (David Suchet) デビット・スーシェ (David Suchet)
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov)
声:里見浩太朗 声:里見浩太朗
  • アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル
  • グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件
  • 安マンションの謎
  • ABC殺人事件
  • 総理大臣の失踪
  • エジプト墳墓の謎
  • エンドハウス怪事件
  • クリスマスプディングの冒険
  • プリマス行き急行列車
  • 消えた料理人
  • 二十四羽の黒つぐみ
  • ダブンハイム失踪事件
  • 雲の中の死
ポワロ
ミス・マープル
マーガレット・ラザフォード (Margaret Rutherford) マーガレット・ラザフォード (Margaret Rutherford)
アンジェラ・ランズベリー (Angela Lansbury) アンジェラ・ランズベリー (Angela Lansbury)
ヘレン・ヘイズ(Helen Hayes) ヘレン・ヘイズ(Helen Hayes)
ジョーン・ヒクソン (Joan Hickson) ジョーン・ヒクソン (Joan Hickson)
ジェラルディン・マクイーワン (Geraldine McEwan) ジェラルディン・マクイーワン (Geraldine McEwan)
ジュリア・マッケンジー (Julia McKenzie) ジュリア・マッケンジー (Julia McKenzie)
声:八千草薫 声:八千草薫
ゆっくり文庫 ゆっくり文庫
ほか
奥さまは名探偵
ほか そして誰もいなくなった 検察側の証人 ほか

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