レビュー  1992年01月05日  に発表された 

ABC殺人事件 / 名探偵ポワロ #31 (デビット・スーシェ主演)
The ABC Murders / Agatha Christie's Poirot #31

4ツ星

らしい犯人と、らしくない犯人

あらすじ

ポアロのもとにABCなる人物から挑戦状が届いた。そのとおりAで始まる地名の町でAの頭文字の老婆が殺された。つづいてBの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の富豪が殺された。現場にはABC鉄道案内が残され、ストッキングの訪問販売員の姿があった。

それぞれの殺人には容疑者がいたが、3つの殺人をつなげる関係性はない。

第4の殺人が起こり、アレキサンダー・ボナパルト・カスト(ABC)という男が警察に自首してくる。カストはてんかん持ちで、自分が犯人ではないかと悩んでいた。そして血まみれのナイフ、脅迫状を印字したタイプライターをもっており、彼を事件現場に行くよう命じた雇い主は存在しなかった。警察はカストを逮捕する。

アガサ・クリスティの代表作であり、連続殺人事件(見立て殺人)の代名詞。多くの亜種が生まれたため、ミステリーに慣れた目で見るとヒネリが足りないように思うかもしれないが、基本とはそういうものだ。初めてミステリーに触れる人におすすめしたい傑作である。

ドラマは原作をほぼ忠実に再現している。テンポもいいし、ユーモアもある。まったく文句はない。しかしここでは、ミステリーに慣れた目で気になるところを書き出してみよう。

ミステリーに慣れた人向け

ドラマは冒頭からカストの異常性が強調され、真犯人はとても地味に描かれている。ポワロは「カストが若い女性を引っ掛けるのは無理」と言うが、冴えない中年のフランクリンにも無理だろう。地味に見えるが、じつは女たらしとか、賭け事が好きとか、なんらかの意外性(狂気)がほしかった。たとえば真相を暴露されると急に雰囲気が変わるとか、いっそ真犯人こそが二重人格だったとか。狂人に見えるが地味なカストと、地味に見えるが狂人の真犯人と対比させるといいだろう。

3つの殺人に3人の容疑者がいて、AもBも疑わしく描いているから、Cのフランクリンが真犯人であると特定するステップが不可欠だ。ポワロは「莫大な遺産」と「宛先を間違えた小細工」を根拠とするが、それだけで断定するのは弱い。証拠もない。これほど大胆な殺人事件を犯した犯人なら、しらばっくれることも可能だっただろう。

カストをヘイスティングスの知り合いにしておけば、ドラマが深まったかもしれない。ヘイスティングスから聞いたポワロの話を、カストが真犯人に伝えることで、計画に組み込まれたとか。ヘイスティングスが友人の疑惑を晴らそうとすれば、推理も明瞭になる。まぁ、だいぶ変化球になってしまうけどね。

本作はスタンダードな映像化として大きな価値がある。だからいつかリバイバルするときは、変化球を期待したいかな。

真相

ポワロは納得できない。カストは優柔不断で、愚鈍で、暗示にかかりやすい。第2の殺人にアリバイがあり、若い女性を引っ掛ける性的魅力もない。一連の犯行は理性をなくしたまま実行するのは不可能だ。

これが無差別殺人ではなく、目的の殺人を隠すための偽装だとしたら?
一連の殺人でもっとも利益を得るのは、第3の殺人で殺された富豪の弟、フランクリン・クラークである。フランクリンは兄の財産を相続したいが、殺せばすぐ自分に疑惑がかかる。そこでドミノゲームで知り合ったカストを利用するアイデアを思いついた。
フランクリンは架空の雇い主となり、タイプライターを送付し、ターゲットに接触するよう指示した。第3の殺人は確実に成功させるため、挑戦状が遅れて届けられる必要があった。そこで個人の住所をもつ私立探偵を巻き込むことにした。
フランクリンの犯行と裏付ける証拠はなかったが、ポワロの嘘に騙されたフランクリンが逃走したことで、逮捕された。

 Googleで「ABC殺人事件 / 名探偵ポワロ #31 」を検索する
 Wikipediaで「ABC殺人事件 / 名探偵ポワロ #31 」を検索する
 IMDBで「The ABC Murders / Agatha Christie's Poirot #31」検索する

コメント (Facebook)

[ASIN] B009DEMDB8
思考回廊 レビュー
ABC殺人事件 / 名探偵ポワロ #31 (デビット・スーシェ主演)