レビュー  2013年11月06日  に発表された 

ヘラクレスの難業 / 名探偵ポワロ #69 (デビット・スーシェ主演)
The Labours of Hercules / Agatha Christie's Poirot #69

3ツ星

クローズド・サークルものにすればよかったのに

あらすじ

ポワロは凶悪犯マラスコーの捜査に参加するが、まんまと絵画や宝石を盗まれ、囮役の女性も殺されてしまった。消沈したポワロは、運転手をしている青年の失踪した恋人を探すため、アルプス山中のホテルに向かった。
そこは警察がマラスコー逮捕のため網を張っているところだった。ポワロをのぞく宿泊客8名の中に、マラスコーがいる。そこには旧知のロサコフ伯爵夫人も含まれていた。

毎度毎度のことながら、ストーリーの方向性をつかむのに苦労する。怪盗マラスコーを捕まえる話かと思いきや、あっさり失敗。雪辱を晴らすかと思ったら、運転手の恋の悩みを解決するため、事前の調査や連絡を一切せずアルプスへ。本気でメイドを説得するつもりだったの? いくらなんでも不自然だ。
行ったら行ったで、ホテルではマラスコー包囲網が展開していて、おまけにロサコフ伯爵夫人まで登場する。そして雪崩。おまけにマラスコーに関係ない犯罪者も混じってる。これが偶然だなんて、とても信じられない。

いまさらロサコフ伯爵夫人

それにつけてもロサコフ伯爵夫人に魅力がない。『二重の手がかり』でも疑問だったが、ポワロは彼女のどこに惚れたのだろう? 賢いところも、小気味よいところもない。高圧的で、自己陶酔しがち。「犯罪から手を洗った」と言いながら盗癖はなおらず。「私は非凡の女神」と言いながら、娘の正体に気づかない。さらにポワロの温情にすがろうとし、叶わぬと拒絶。悲しいほど小物だ。『メソポタミア殺人事件』でまわしたホテルの支払いは、ちゃんと返済したんだろうか? むしろ返済するためポワロを追ってきたと言ってくれれば、偶然が減ったのに。

娘アリスの描写も足りない。カニンガムという「ゆきずりの男」と結婚したようだが、詳しいことは語られない。だったらアリス・ロサコフでいいじゃん。ポワロは「マドモワゼル・カニンガム」と呼ぶから、混乱してしまう。そもそも本当に伯爵の妻子なんだろうか?
ロサコフ伯爵夫人は、ケーブルカーで下山中にポワロを見かけ、引き返してきた。この偶然がなければ、マラスコーを捕まえることはできなかったわけか。「ホテルに引き返す」とロサコフ伯爵夫人が言ったとき、アリスはどう反応しただろう? ポワロに興味をもったのだろうか?

そして後味の悪いエンディング。ファイナルシーズンなのに、気が滅入る。

「雪崩で孤立したホテル」「宿泊客の中に凶悪犯」「ポワロの想い人が容疑者に」というプロットで十分だから、ホテルから物語をスタートさせればいい。ポワロはマラスコーを追ってきた。マラスコーとの確執は回想シーン。これで十分だろう。ちょっと再構築してみた。

★妄想リメイク

ポワロはロサコフ伯爵夫人に招かれ、アルプスのホテルにやってきた。麓で警察官に、ホテル内にマラスコーが滞在していること、刑事が潜入調査していることを告げられる。ポワロは昨年、マラスコーの逮捕に失敗し、苦い思いをしていた。

ホテルに到着したポワロは、ロサコフ伯爵夫人とその娘アリスと、楽しい時間を過ごす。犯罪心理に詳しいアリスにマラスコーのことを質問されるが、バカンスを楽しみたいと返すばかり。ポワロが帰る日、雪崩が起こってホテルは隔絶される。マラスコーと思われる死体が見つかったことで、滞在客が騒然となる。ポワロは無線機を修理し、地元警察に応援を要請。滞在客と従業員を集め、謎解きをはじめた。

マラスコーは盗品をホテルの調度品に紛れ込ませ、従業員がこれを回収する段取りになっていた。盗品は回収できたが、マラスコーの正体がわからない。そこでポワロはいくつかのテストを仕掛け、アリスがマラスコーであると確信した。
アリスは隠してあった銃を抜いて、その場を制圧する。滞在客も従業員も皆殺しにするつもりだ。もちろん、母親も例外ではない。ポワロが応援を要請したと言うが、無線は演技だと笑う。ところが警官隊が突入してきて、アリスは取り押さえられる。じつは雪崩によってケーブルカーが普通になったという話もうそだった。

納得できないアリスに、ロサコフ伯爵夫人が語る。ポワロを呼び寄せ、包囲網を作らせたのは、母親だったのだ。母親とポワロに悪態をつきながら連行されるアリス。ロサコフ伯爵夫人はポワロに感謝するが、「もう会うことはないでしょう」と告げ、去っていくのだった。

(おわり)


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