レビュー  1987年01月11日  に発表された 

スリーピング・マーダー / ミス・マープル (6/12)
Miss Marple / Sleeping Murder

3ツ星

「人を信じるのは危険だわ。あたしは信じない。」

あらすじ

若い夫婦(グエンダとジャイルズ)が海辺の大きな家に引っ越してきた。グエンダは家のあちこちで既視感を抱く。ある夜、観劇の最中に失神したグエンダは、この家で殺人があったことを思い出す。

「ミス・マープル 最後の事件」という触れ込みだが、発表が最後になっただけで、シリーズ最終作らしい要素はなにもない。回想の殺人としても、「五匹の子豚」のような鮮烈さはない。おもしろいのは導入部だけ。
概要をまとめてみよう。

真相

ジェイムズ・ケネディは義理の妹ヘレンを溺愛していた。兄を疎んじたヘレンは(いろいろあって)ケルヴィンと結婚。ジェイムズは感情を抑えきれず、ヘレンを絞殺。その現場をグエンダ(3)が見ていた。死体は庭に埋めた。

ジェイムズはヘレンは駆け落ちしたと吹聴。外国で暮らすヘレンの手紙を偽造。ケルヴィンを精神的に追い詰め、療養所に入れた。残されたグエンダはニュージーランドの親戚に預けられ、事情を知らぬまま育った。


18年後、グエンダ(21)は結婚し、イギリスで新生活をはじめる。偶然、かつて自分が住んでいた家(ヒルサイド荘)を見つけ、買い取る。既視感に悩まされたグエンダは、かつてこの家でヘレンという女性が殺されたことを思い出す。

ヘレンは18年前に駆け落ちしていた。ヘレン失踪に関与したとおぼしき男性が3名(弁護士、大佐、経営者)見つかるが、確証はない。ヒルサイド荘の使用人(リリィ)が殺される。
マープルは庭の状態から、ヘレンの死体を見つける。

ジェイムズはグエンダを殺そうとするが、マープルの噴霧器によって撃退された。(おわり)

ジェイムズは愛するヘレンを絞殺し、その名誉を貶めた。ケヴィンを破滅させ、死体を埋める現場を見た乳母レオニーをスイスで殺害。なにも知らないリリィも口封じした。だのにグエンダは最後まで泳がせていた。とんでもない悪党だが、理解しがたい。

容疑者は多く、ドラマもないため、集中力を維持できない。マープルは犯人を推理していたようだが、決め手はグエンダの記憶であって、知的カタルシスもない。

  1. ジェイムズ・ケネディ ... ヘレンの兄。医師。
  2. ウォルター・フェーン ... 弁護士。ヘレンは結婚しようとするが、やめた。
  3. エリノア ... ウォルターの母。息子を溺愛し、ヘレンを敬遠していた。
  4. リチャード・アーキンソン ... 退役少佐。インドに向かう船上でヘレンと知り合い、ウォルターとの結婚を思いとどまらせた。
  5. アーキンソン夫人 ... 嫉妬深い妻。夫がヘレンと密通したと疑っている。
  6. ジャッキー・アフリック ... 観光会社経営者。ヘレンを好いていたが、ジェイムズに放逐された。派手な車を持っている。

最大の問題はテーマがないこと。マープルは、眠っている殺人者は起こさないほうがいいと助言するが、さしたる理由もなく調査に付き合う。真相がわかっても、グエンダの現在にまったく影響しないため、なんの感慨も湧かなかった。

最初にジェイムズの話を聞いたので、「ヘレン=男好き」という先入観で調査してしまったのはおもしろかった。

マープルは人を信用しないため、惑わされなかったという。理屈はわかるが、人を信じない人生はつらそうだ。かと思えば、「バラを植えるなら人の忠告を聞いたほうがいい」と、矛盾したことを言い出す。手に負えないおばあちゃんであった。


 Googleで「スリーピング・マーダー / ミス・マープル 」を検索する
 Wikipediaで「スリーピング・マーダー / ミス・マープル 」を検索する
 IMDBで「Miss Marple / Sleeping Murder」検索する

コメント (Facebook)

[ASIN] B00006HBHQ
思考回廊 レビュー
スリーピング・マーダー / ミス・マープル (6/12)