レビュー  1987年02月25日  に発表された 

パディントン発4時50分 / ミス・マープル (9)
Miss Marple / 4:50 from Paddington

4ツ星

神のごとき安楽椅子探偵

あらすじ

パディントン発4時50分の列車に乗っていたマクギリカディ夫人は、並行する列車のなかで、男が女を絞め殺す瞬間を目撃する。話を聞いたミス・マープルはスラック警部に通報。しかし線路沿いに死体は発見されなかった。
ミス・マープルは、線路沿いにあるクラッケンソープ家の屋敷に死体が隠されたと考え、高級家政婦のルーシー・アイレスバロウに捜査協力を依頼する。

クラッケンソープ家に潜り込んだルーシーは、納屋でフランス人女性の死体を発見する。スラック警部が捜査を指揮し、スコットランド・ヤードからダッカム警部が応援にやってきた。クラッケンソープ家の人間は殺された女性に面識がないと言う。だれが殺されたのか、なぜここに捨てられたのか?

長男エドマンドは出征前、フランス人女性と結婚したが、相手の名前や素性はわかっていなかった。数日前、「エドマンドの妻」を自称するものからお金を無心する手紙が届いていた。よって殺されたのはエドマンドの妻ではないかと考える。ほどなく、殺害されたのはフランス人ダンサーのマルティーヌ・ペローと判明する。マルティーヌはエドマンドの妻か? ミス・マープルは裏付けのため、エドマンドの軍隊時代の友人を調べたほうがよいと助言。案の定、友人たちはマルティーヌという女性を知らなかった。では殺されたのはだれなのか?

その後、ハロルドの死体が森で発見される。トラバサミに足を取られて銃が暴発したのか、妻に保険金を遺すための自殺か? しかしミス・マープルは、ハロルドがそこまで妻を愛していたとは思えないといい、彼の妻(アリス)の家を訪ねる。そこでミス・マープルは、ハロルドが熱烈なバレエ・ファンだったことを知る。犯人は、ハロルドがマルティーヌの素性に気づくかもしれないと思い、口を封じたと推理する。

土曜日、ミス・マープルはマギリカディ夫人を呼び寄せ、クインパー医師の後ろ姿が目撃した殺人犯そっくりだと証言する。あっけにとられる家人に、ミス・マープルは殺された女性がクインパー医師の妻だったことを告げる。クインパーはエヴァ(次女)と結婚し、クラッケンソープ家の財産を手に入れたいと考えたが、敬虔なクリスチャンであるマルティーヌは離婚に応じない。そこでマルティーヌを殺害し、「エドマンドの妻が殺された」ように見せかけたのだ。

事件解決後、ルーシーはブライアンと結婚する。

実質的な主人公はルーシー・アイレスバロウだが、ミス・マープルの存在感が大きい。仮に犯人がルーシーの捜査に気づいたとしても、背後にミス・マープルがいることは見抜けないだろう。探偵サイドに黒幕がいるってのも奇妙だが、おもしろい。

本作は、私が見た最初の「パディントン発4時50分」なので、ほかの映像化作品を見るときの起点に据えていたが、じつは原作と異なる点が多かった。しかも消化不良の改変が多い。いろいろ惜しまれる。

薄弱なキッカケ

並行する列車の窓越しに殺人現場を目撃するなんて、素晴らしい導入だ。しかしマギリカディ夫人の見間違いだった可能性は低くない。お芝居の稽古かもしれないし、相手の女性は死ななかったかもしれない。確実に死んだとわかる描写がほしい。
また死体がクラッケンソープの屋敷に隠されたと考える根拠も弱い。車内に死体が見つからない。トランクなどで死体を持ち運ぶことは難しい。列車から死体を捨てたと思われる。しかし後続の列車が死体を見ていないことから、死体は斜面を転がり落ちたはず。と推理して、該当する地点を割り出してほしかった。さらに死体がそこにあると確信しても、高級家政婦(ルーシー)に捜査を依頼するのは過剰に思える。
まぁ、確信を得るため捜査するわけだから、最初は根拠に乏しいのは仕方ないか。冷静に分析すると、ミス・マープルの行動は無駄がなく、すべてを見通しているように思えてならない。

肝心なシーンが見えない

犯人の意図は、死体の身元を「エドマンドの妻」に偽装することだ。なので、「エドマンドの妻」を自称する人物から手紙が届いたことは強調すべきだが、当該シーンの映像がないどころか、手紙の内容さえわからない。エドマンドが結婚していて、さらに長男がいるなら、遺産相続の予定が大きく変わる。兄弟たちが「詐欺だ」「警察に言うな」と反応することで緊迫感も高まるだろうに、もったいない。

ハロルドが殺される理由

犯人はハロルドを「死体の素性を知っているかもしれない」という理由で殺害する。しかしハロルドは警察に「見覚えがない」と証言している。彼には嘘をつく理由がない。クインパーに結びつけて恐喝することもできない。おまけに死体の身元はすぐマルティーヌ・ペローと確認されてしまう。まったくハロルドはなんのために殺されたんだか。
ハロルド自殺説も掘り下げが浅い。さらに事故死の可能性もクローズアップされ、無駄に視聴者を混乱させている。

疑わしさが足りない

セドリック(次男)は事件当時イギリスにいなかったと思われていたが、実際はいたとブライアンは証言する。しかし直後、セドリック自身が不倫を認めため、疑惑が盛り上がらない。「犯人かもしれない」と思わせる気がないなら、よけいな情報を出すべきじゃない。
ブライアンも同じ。彼は殺人があった列車に乗っていたが、ミス・マープルも警察も気づかないまま終わる。思わせぶりなシーンを入れるなよ。

ルーシーの結婚相手

本作のルーシーはブライアンと結婚するが、どうにも釈然としない。セドリックとのキスも含め、もうちょい恋の鞘当てを見たかった。
ミス・マープルは、ルーシーはブライアンを愛していないが、教育できるから選んだと喝破する。おもしろい解釈だが、無理して結婚する理由もないから、やはり釈然としない。

パディントン発4時50分:キャスティング比較


※1961 夜行特急の殺人 (ラザフォード版)


※1987 パディントン発4時50分 (ヒクソン版)


※2004 パディントン発4時50分 (NHKアニメ版)


※2007 パディントン発4時50分 (マクイーワン版)


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パディントン発4時50分 / ミス・マープル (9)