ピントが合わない
あらすじ
掃除婦のマギンティ夫人が殺害され、下宿人が逮捕された。有罪判決が確定し、死刑を待つばかり。納得できないものを感じたスペンス警視は、ポワロに再調査を依頼する。
結末までストーリーを書こうと思ったが、断念した。登場人物が多く、もろもろ複雑で、そのくせおもしろくないからね。本筋に関係ないことが多すぎる。
ポワロは列車に突き飛ばされたことで「真犯人は別にいる」と喜んだが、本筋に関係なかった。馬鹿な下宿人(ベントリー)を心配する恋人(モード・ウィリアムズ)は、じつは第2の犠牲者(アップワード夫人)を殺す寸前だったが、これも本筋に関係ない。田舎の名家が零落し、それでも体裁を気にする空気がたんねんに描かれるが、やはり本筋に関係ない。ついでにオリヴァ夫人も、本筋に関係ない。ポワロの推理に影響をあたえることもない。余計なものが多い。
本題はマギンティ夫人殺害を調査することだが、アップワード夫人の殺害のほうが目立ってしまったのもマイナス。
最初に見たとき印象的だったのは、下宿人(ベントリー)のとぼけた反応。彼は無実なのに死刑に処されると言うのに緊張感がなく、ポワロに対してあいまいな受け答えをする。だれかをかばっているようにも見えない。「あんがい、こいつが真犯人じゃないか?」と思ったが、よくよく考えると、そんな人物だから犯人に利用され、陪審員に信じてもらえなかったわけで、リアルと言えばリアルだった。
マーガレット・ラザフォード主演の「ミス・マープル/最も卑劣な殺人」(Murder Most Foul 1964)も、同じ原作「Mrs McGinty's Dead」を翻案しているが、うまく整理されており、おかげで探偵の行動に集中できる。
ポワロは、短編はおもしろかったが、長編はどれもパッとしない。