レビュー  1995年02月12日  に発表された 

ヒッコリー・ロードの殺人 / 名探偵ポワロ #43 (デビット・スーシェ主演)
Hickory Dickory Dock / Agatha Christie's Poirot #43

3ツ星

「レモン風ですわ。んふふ♪」

あらすじ

ポワロは、秘書のミス・レモンの様子がおかしいことに気づく。話を聞くと、姉のハバード夫人が管理する学生寮で、奇妙な盗難が相次いでいるそうだ。興味をもったポワロは寮に赴き、学生たちに大変なことが起こる前に警察へ行くよう警告する。

翌日、シーリアとマクナヴがポワロの事務所を訪れ、シーリアの盗癖が原因だと告白する。しかしシーリアはリュックサック、聴診器、電球、ホウ酸は盗んでないと言う。ポワロは、これが事件の始まりだろうと予感する。

後日、シーリアが多量のモルヒネによって毒殺される。つづいて下宿経営者のニコレティスが刺殺。警察はモルヒネを秘匿し、動機なき殺人を主張していた医学生コリンを逮捕する。その後、真犯人を知っていると言っていたパトリシアが撲殺される。

ミステリーについて

盗まれたもののうち、シーリアとコリンが関与していないものは、ホウ酸、電球、リュックサックの3つ。ホウ酸はモルヒネとすり替えるため、電球は暗がりを作るため、リュックサックはダイヤを取り出すためと説明されるが、だとすると犯人は取引のたびリュックを切り裂いていたことになる。不自然だ。なにか見落としたかな?
ポワロは、バレリーが指輪の価値を見抜いたこと、自分のスープから指輪を見つけたこと、特殊な縫い方をすることから、密輸グループの一員であると見抜いた。しかし共犯者の存在をほのめかす証拠はなく、主犯がナイジェルとする推理は成り立たない。

結局、パトリシアの殺害現場で拾った写真で犯人を特定したわけで、推理もへったくれもなかった。しかし犯人は、パトリシアが写真を持っていたから殺したはず。大胆な偽装をやっておきながら、目的の証拠を回収しないなんて、マヌケだ。
しかしマヌケはポワロも同じ。ポワロは事件が起こる前から関与して、警告も与えたが、犯人はそれを無視して2人を殺害した。これはこれで完全犯罪だった。パトリシアが証拠を見つけたのは偶然で、密輸とは関係しない。たまたま同時期に起こっただけで、たとえば数年後だったら2つの殺人と結びつけるのは困難だっただろう。棚ぼたの解決だ。
ポワロは「おもしろい」と喜んでいたが、いいところがなかった。

ドラマについて

つまらない盗難から事件に関わっていく導入部はおもしろいが、それだけ。学生たちの人間模様はさっぱり描かれない。べつにラブロマンスを描いてほしいわけじゃないが、ポワロに挑戦しようとしたり、友だちの裏切りに激高したり、疑心暗鬼になるといったドラマを見たかった。

シーリアは犯人を脅迫したわけじゃない。確たる証拠を持っていたわけでもない。そもそもリュックを切り裂いた犯人の顔を見ていたかどうかも怪しい。おまけに有名な私立探偵が興味を示し、警告もしていた。だのに犯人は凶行に及んだ。つまり犯人はポワロを舐めている。このあたりで犯人の万能感、傲慢が描かれると思ったが、なかった。ポワロも犯人に怒るでもない。なんだかなー。

冒頭から出てくるスタンリー卿も密輸事件に関係しない。ネズミも事件解決に寄与しない。関係ないものが目立ちすぎる。

ジャップ警部の受難について

ジャップ警部は、妻が旅行に出てしまったため生活に困窮し、ポワロのアパートに一週間泊まることになる。しかしポワロの生活習慣は上品すぎて、ジャップ警部の口に合わない。同じイギリス人のミス・レモンも、ジャップ警部の期待する食事を作ってくれなかった。あわれ。
ラスト、ジャップ警部はおかえしにイギリス風の食事をポワロにふるまうが、ポワロは拒否。やむなくねずみ取りのチーズを供する。

ポワロとジャップ警部の友情は繰り返し描かれるが、文化的な差が大きすぎて、和気藹々の雰囲気にならないところが残念。微笑ましい気持ちにしてほしいが、ひょっとしたらイギリス人はこれを微笑ましく思うのかもしれない。

でもまぁ、ミス・レモンの活躍が描かれたのはうれしかった。

真相

ナイジェルとバレリーは、ニコレティスのルートでダイヤを密輸していた。ところがシーリアに現場を見られたため、コリンが盗んだモルヒネを使って毒殺した(ポワロが学生寮に注目しているにも関わらず)。ニコレティスが警察に通報すると言い出すと、彼女も刺殺。罪をコリンに着せようとした。

ナイジェルは過去にも母親を毒殺していた。そのことに気づいたパトリシアを撲殺。共犯者のバレリーを使って犯行時刻をごまかした。
しかし殺害現場に写真を残してしまったため、逮捕された。ばーか。

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ヒッコリー・ロードの殺人 / 名探偵ポワロ #43 (デビット・スーシェ主演)