三幕の殺人 / 名探偵ポワロ #62 (デビット・スーシェ主演) Three Act Tragedy / Agatha Christie's Poirot #62
2010年 海外ドラマ 3ツ星 探偵 @アガサ・クリスティ動機がへんじゃない?
舞台劇のような演出がちょこちょこ入るが、徹底されてない。なんとも中途半端。構成を整理して、舞台劇に仕上げちゃえばいいのに。
今回も登場人物が多く、それぞれを疑わしく見せようとするため、状況把握が難しい。ポワロがいない場面が入るのも、混乱に拍車をかける。
4回見てトリックは理解できたが、動機がわからない。殺人のリハーサルなんて意味あるの? 本番とは状況がちがうじゃん。連続殺人と思わせたいなら、パスポートでアリバイが崩れるのもお粗末。
ストレンジ医師がカートライトの変装に気づきながら、それを黙っていた理由もわからない。カートライトの殺意に気づいておらず、その変装が「みんなを驚かせること」だったのか? だとしたらカートライトとストレンジ医師が悪戯を企むシーンを挿入してほしい。オリバーに事故を偽装させる意図もわからない。言うほど疑惑が高まってないからだ。
もっとも不可解なのは、患者ラッシュブリッジャーを殺害したこと。ポワロは「執事エリスは殺された」と推理していたのだから、新たな犠牲者を出す必要はない。しかも手紙を出したことで、ポワロに正体を見破られている。
そもそも毒入りチョコで入院患者を殺せるなら、本当の妻を始末すればいいのだ。3人殺すより確実じゃないか。
劇作家アスター(ミュリエル・ウィルズ)に疑惑を向けたかったようだが、それなら「アスターの姿が見えない」「ポワロの名を騙った犯人に呼び出された」と騒ぐシーンがあるべきだろう。
謎解きも早い段階でカートライトの名前が出ちゃうから、エッグはずっと怯えっぱなし。疑問点を1つずつクリアして、最後の最後に正体がわかるカタルシスもなかった。
ただ、カートライトに「くたばれ」と言われ、ポワロがびくっとなるのはよかった。ポワロはカートライトを友人ではなく、なにをするかわからない異常者と見ていることが露見するシーンだった。
あらすじ
第1幕
パーティーの席上で牧師が死亡する。だれがどのグラスを取るかわからない状況で、グラスに毒は検出されず、牧師を殺す動機も考えられない。ポワロは事件性はないと断ずるが、カートライトとエッグは独自に捜査をはじめる。
- カートライト ... ホスト。引退した俳優。ポワロの友人。
- ポワロ ... 名探偵。
- ストレンジ ... 著名な精神科医。
- エッグ ... カートライトの友人。美しく、好奇心旺盛なお嬢さん。
- メアリー ... エッグの母。
- バビントン ... 地元の牧師。
- バビントン夫人 ... バビントン牧師の妻。
- デリク大尉 ... 大尉。
- シンシア ... デリクの妻、ドレスメーカー。
- アスター ... 女性劇作家。
- オリバー ... エッグの友人。
- ミルレー ... カートライトの秘書。
第2幕
1か月後。ストレンジ医師がカートライトとポワロ以外のメンバーを招いてパーティーを開催する。その席上でストレンジが死亡。死因はニコチン中毒。グラスから毒物は検出されなかったが、牧師と同じ死に方だったため、ポワロも殺人の可能性を認める。
第一の容疑者は事件直後に姿を消した執事のエリス。彼はだれかを恐喝していたようだ。犯人はストレンジ医師を毒殺するつもりだったが、まちがって牧師を殺したのか? しかしストレンジ医師はカクテルを飲まない。
ポワロがシェリーパーティーを開催する。席上、カートライトが突然倒れる。エッグはポワロをなじるが、カートライトの演技だった。ポワロは、毒入りグラスを取り替えることが可能だと証明した。
またポワロは、カートライトが倒れたときの、ある人物の反応を観察したが、その名前は伏せられた。牧師を殺害した動機がわからないためだった。
ポワロのもとにストレンジ医師の患者であるラッシュブリッジャーから手紙が届く。訪問すると、毒入りチョコレートで殺害されたあとだった。なぜラッシュブリッジャーは殺されたのか?
ポワロは関係者を劇場に集め、謎解きする。
第3幕
犯人はカートライト。カートライトはエッグと結婚するため、若かりし日に結婚した事実を伏せたい。過去を知る親友ストレンジ医師を殺害すべく、執事として潜入し、毒を混入した。牧師の殺害はリハーサルだった。ラッシュブリッジャーの殺害は偽装工作。
ポワロは、自分も毒入りグラスを飲む可能性があったことに戦慄する。
米版と英版で異なる動機
後日、ピーター・ユスティノフ版『死者のあやまち』(1986)を鑑賞し、動機がちがっていることに驚いた。どうやらアメリカ版とイギリス版で動機が異なるようだ。なぜクリスティは動機を差し替えたのか、確たる理由はわかっていない。思いっきりネタバレになるが、書き出しておく。
- | アメリカ版 | イギリス版 |
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原題 | Three Act Tragedy | Murder in Three Acts |
邦題 | 三幕の悲劇 | 三幕の殺人 |
出版 | 1934 | 1935 |
書籍 | ||
動機 | 狂気:芸能界に復帰するため、自分の狂気を知っている医者を取り除く。 | 愛情:エッグと結婚するため、自分の結婚歴を知っている医者を取り除く。 |
映像化 | ユスティノフ版「三幕の殺人」(1986) |
スーシェ版「三幕の殺人」(2000) |
圧倒的にユスティノフ版の方がおもしろい。オチだけでなく、キャラクターやドラマもよかった。興味ある方はぜひ見比べてほしい。
アガサ・クリスティ | |
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ポワロ | |
デビット・スーシェ (David Suchet) | |
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) | |
声:里見浩太朗
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ミス・マープル | |
マーガレット・ラザフォード | |
アンジェラ・ランズベリー | |
ヘレン・ヘイズ | |
ジョーン・ヒクソン | |
ジェラルディン・マクイーワン | |
ジュリア・マッケンジー | |
声:八千草薫
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ゆっくり文庫 | |
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