予告殺人 / ミス・マープル (3/12) Miss Marple / A Murder Is Announced
1985年 海外ドラマ 3ツ星 探偵 推理 @アガサ・クリスティ「容疑者じゃない人なんていません!」
あらすじ
チッピング・クレグホーンの地元新聞に「リトル・パドックス(下宿屋)で殺人が起こる」という広告が掲載される。奇妙に思った村人たちが下宿屋に集まってくる。予告された時刻、部屋の灯りが消えて、強盗が押し込む。銃声が3発。灯りがつくと、男が死んでいた。
男はルディ・シャーツ。スイス人からの避難民で、ホテルのフロントをしている。窃盗や小切手偽造の前科がある小悪党だった。新聞で村人たちの注目を集め、強盗に入ったが、転んで自分を撃ったと思われたが...。
登場人物
肖像 | 解説 |
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リトル・パドックス | |
レティシア・ブラックロック (Letitia Blacklock)リトル・パドックスの女主人。聡明で、親切で、村人たちに信頼されている。実業家ランダル・ゲドラーの秘書だったが、妹を介護するためスイスに移住。妹が亡くなったため、チッピング・クレグホーンに越してきた。ゲドラー夫人が亡くなると、遺産を継いで大金持ちになる。 |
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ドラ・バンナー (Dora Bunner)レティシアの学生時代の友だち。スイスから戻ってきたレティシアを訪ねたところ意気投合し、いっしょに暮らすようになった。気立てはいいが、おしゃべり。「レティシアが狙われた」と警部に訴える。誕生パーティの翌日、レティシアの頭痛薬を飲んで死亡する。第2の被害者。 |
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バトリック・シモンズ (Patrick Simmons)最近やってきたレティシアの従弟。ミルチェスター大学の学生。素性は不確か。ハンサムで、冗談好きの気取り屋。 |
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ジュリア・シモンズ (Julia Simmons)パトリックといっしょに訪ねてきた従妹。ミルチェスターの病院で研修中。気取り屋。 |
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フィリッパ・ヘイムズ (Phillipa Haymes)下宿人。美しいが、寡黙。子どもの学費に困っている。エドマンドに求婚されるが、拒絶。夫は脱走兵で、事故死する。 |
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ミッチー (Hannah Mitzi)リトル・パドックスの料理人。他国からの避難民で、被害妄想がある。料理の腕前はたしか。 |
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イースターブルック家 | |
イースターブルック大佐 (Colonel Archie Easterbrook)心理学者。事件に使われた銃の持ち主。 |
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ローラ・イースターブルック (Laura Easterbrook)イースターブルック大佐の妻。美人だが、軽薄なところがある。夫を守るためならウソもつく。 |
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スウェッテナム家 | |
エドマンド・スウェッテナム (Edmund Swettenham)スウェッテナム家の一人息子。文学青年。共産主義者。フィリッパに恋している。 |
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スウェッテナム夫人 (Mrs Sadie Swettenham)エドマンドの母。リトル・パドックスに出入りしている。 |
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養鶏業者 | |
ヒンチリフ (Miss Hinchcliffe)気っ風がよく、マーガトロイドと仲がよい。独自に犯人を推理する。 |
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エイミー・マーガトロイド (Miss Amy Murgatroyd)のんきで、物覚えが悪い。ドアの近くにいたため、懐中電灯に照らされた村人たちの顔を見たが、名前を告げる前に殺される。第3の被害者(扼殺)。 |
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牧師館 | |
ダイアナ(バンチ)・ハーモン (Diana "Bunch" Harmon)ジュリアン牧師の妻。マープルの親戚。 |
ほか
- ランダル・ゲドラー (Randall Goedler) ... 十年前に亡くなった富豪。
- ベル・ゲドラー (Belle Goedler) ... ゲドラーの遺産を受け継ぎ、スコットランドで療養中。あと数週間で死亡する見込まれている。夫人が死ぬと、レティシアが財産を相続する。
- ソニア (Sonia Goedler) ... ゲドラーの妹。ランダルと対立していたため、相続から除外される。
- ピップとエマ (Pip and Emma) ... ゲドラーの妹の子どもたち。消息不明。ゲドラー夫人より先にレティシアが亡くなった場合、遺産を相続する。
- ルディ・シャーツ (Rudi Scherz) ... スイス人。ホテルのフロントで働きながら、窃盗や小切手偽造で小銭を稼いでいた。第1の被害者(射殺)。
- シャーロット・ブラックロック (Charlotte) ... レティシアの妹。甲状腺肥大に悩まされていた。結核で亡くなった。
- マーナ (Myrna Harris) ... ウェイトレス。シャーツの恋人。
感想
原作どおり、クラドック警部が登場。甘いマスク、ゆったりした雰囲気。メイドと話すと、口説いているようなムードになる。
捜査に行き詰まると、上司に勧められるままミス・マープルに相談。その指摘が的確だったため、以降は忠実に行動する。有能かつ素直な警部なんて久しぶりだ。
ただマープルは紹介される前の警部に挨拶している。以前から知り合いだったという設定が、撮影中に変わったのだろうか? 「鏡は横にひび割れて」では甥になってるし、いい加減だ。
※クラドック警部(John Castle)
マープルは詳しい事情を知るため、ハーモン夫人の牧師館に移動。殺人事件への興味をむき出しにして、関係者から話を聞いていく。こういうところはすごい。しかし聞き上手なところがバンナー殺害の要因になったのは残酷だ。
※相手を気持ちよくしゃべらせ、奇妙なところは見逃さない
バンナーが死んだとき、レティシアはわんわん泣いた。マープルが慰めたところから、真実の涙と言える。ゆえに悲しく、恐ろしい。レティシアは悪人ではなく、追い詰められた動物になっていた。警察がいるのにハンナ・ミッチを溺死させようとしたのは、狂気としか言いようがない。
※わんわん泣く
※親切な殺人者
マープルは折に触れて世の変化をつぶやく。紹介状もない人が村に入ってくる。思い出を分かち合える人がいなくなるのはつらい。「昔はよかった」と嘆くわけではないが、去ったものを惜しむような雰囲気に呑まれる。ヒクソンのマープルは哀愁が感じられる。
推理チャート
どうやって推理したか、分析してみよう。
- 警察の見解 ... ルディは前科持ちの小悪党。レティシアにお金を借りられなかったことを逆恨みして、押し込み強盗を働いたが、転んで自分を撃ったか、自殺した。
- クラドックの疑問 ... バンナーは「レティシアが狙われた」と訴えた。根拠はないが、無視できない。
- マープルの指摘 ... ドアを手で押さえ、懐中電灯を照らしたら、銃を持てない。ルディの背後に、銃を持った人物Xがいた。Xはルディにお金を払って、パーティの余興をやってもらった。人物Xの目的は、レティシアの殺害。ルディは口封じされた。
- クラドックの調査 ... ルディの恋人の証言で裏取り。ゲドラー夫人が亡くなるまえにレティシアを殺害して利益を得るのは、ソニア・ゲドラーの子どもたち。
- ヒップとエンマが近くにいたら?
年齢が近いのはバトリック、ジュリア、フィリッパ、エドマンド。 - ソニアが生きていたら?
年齢が近いのはバスウェッテナム夫人、ヒンチリフ、マーガトロイド
- ヒップとエンマが近くにいたら?
- 第二の殺人 ... 誕生パーティのあと、バンナーがレティシアの頭痛薬を飲んで死亡した。誕生パーティは豪勢だった。出席者は全員、頭痛薬をすり替えるチャンスがあった。レティシアは、バンナーの死に号泣した。
- 第三の殺人 ... 犯人を見たマーガトロイドが扼殺された。
- マープルの気づき ... レティシアには妹シャーロットがいた。バンナーが言っていたのはスタンドのすり替え。スタンドに水をかけて、漏電させた。レティシアが犯人。でも証拠がない。
- マープルの仕掛け ... ミッチに目撃証言をさせ、殺人衝動を起こさせ、現行犯逮捕。
よけいな設定が多く感じられるが、原作に比べると削りすぎて意味を失っている。レティシアが親切であったことも言及されず、残念だ。でもまぁ、マクイーワン版のお金の亡者よりマシか。
【ゆっくり文庫】で妄想再現した。
アガサ・クリスティ | |
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ポワロ | |
デビット・スーシェ (David Suchet) | |
ピーター・ユスティノフ (Peter Ustinov) | |
声:里見浩太朗
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ミス・マープル | |
マーガレット・ラザフォード | |
アンジェラ・ランズベリー | |
ヘレン・ヘイズ | |
ジョーン・ヒクソン | |
ジェラルディン・マクイーワン | |
ジュリア・マッケンジー | |
声:八千草薫
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ゆっくり文庫 | |
奥さまは名探偵 | |
ほか | |
検察側の証人 | |
そして誰もいなくなった | |
ほか |