怪談 / 時代劇 怪談シリーズ (テレビドラマ/全10話) Kwaidan

1972年 日本ドラマ 3ツ星 ホラー:ショート 幽霊 恋愛 文学・古典・童話 時代劇 牡丹燈籠

日本の「怖い」が結集してる

一話完結のオムニバス形式によるテレビ時代劇。有名な古典を翻案したものもあれば、まったくのオリジナル脚本もある。原作があっても、あまり忠実ではない。
恐怖シーンは、真っ暗な背景に化生がライトアップされたり、消えるのが基本パターン。安直だが、けっこう怖い。襲われる人間も、生きようと抗ったり、あるいは死を受け入れるため、尋常ならざる緊張感がある。ストーリーに不可解なところがあっても、雰囲気に圧倒される。1本50分とボリュームがある。なかなかヘビーなテレビドラマだった。

第1話「四谷怪談」 (天知茂、円山理映子) 原作:四世鶴屋南北

[あらすじ] 不実な浪人=伊右衛門は、裕福な商人=伊藤喜兵衛の娘=お梅と結婚したいが、妻=お岩と産まれたばかりの子がいるため身動きできない。しかも伊右衛門は、婿入りに反対したお岩の父を殺した過去があり、その秘密を同僚=秋山に握られ、恐喝されていた。
娘を溺愛する喜兵衛は、乳母=お槇を通じ、お岩に毒薬を盛って顔を醜くただれさせる。按摩=宅悦から真相を聞かされたお岩は、怒りと絶望から自刃して果てた。伊右衛門は盗みを働いた小平を斬って、間男として通報。お岩と小平を戸板に打ち付けて川に流した。
伊右衛門は伊藤家に婿入りするが、幻覚のためお岩、喜兵衛、お槇を殺してしまう。伊右衛門は赤ん坊を引き取った寺に駆け込むが、秋山の裏切りによって岡っ引きに囲まれる。伊右衛門は秋山と相打ちして果てた。

[感想] 天知茂といえば『東海道四谷怪談』(1959)だが、小平、秋山長兵衛、お槇が省略されなかったのは興味深い。ただ本作の伊右衛門は色悪としての魅力が乏しく、今ひとつ盛り上がらない。お岩の出番も少ない。『四谷怪談』(1965 主演:仲代達矢)が迫力満点だったため、そう思ってしまう。

第2話「牡丹燈篭」 (田村亮、高田美和) 原作:三遊亭圓朝

[あらすじ] 新三郎はお露という娘と恋仲になる。しかし下宿人=伴蔵の尾行によって、お露がこの世のものでないことが判明する。新三郎は僧侶から金無垢の如来とお札を借り受け、お露を退ける。するとお露とお米は伴蔵を脅し、如来を偽物にすり替え、お札を剥がさせた。お露の死は、伴蔵にレイプされたことが原因だった。
新三郎は侵入してきたお露に恐怖するが、やがて同情し、いっしょのお棺に入ってしまう。一方、伴蔵は死霊のお米に惑わされ、自分で自分を刺してしまった。

[感想] お露の大胆さに驚かされる。お化け屋敷で気絶して、介抱してもらったのは、深い仲になるための演技だったのか。新三郎が恐怖するのも無理はない。
お露が伴蔵にレイプされたという翻案は驚きだが、お露の処女性が失われたことで、なんともやるせない気持ちになった。あと、お米が少女というのも新鮮。これはこれで悪くない牡丹燈籠だった。

第3話「蚊喰鳥」 (田村高廣)

[あらすじ] 盲目の按摩=徳の市は、美人師匠=菊次に惚れていたが、なにも言えないまま病死する。やはり盲目の按摩である弟=辰の市が菊次を訪れ、兄の気持ちを伝えるが、それが縁で菊次に惚れてしまう。
徳の市と辰の市は百両もの貯金があったので、菊次は恋人=孝次郎と結託して金を巻き上げようとする。しかし孝次郎のヤキモチから計画は破綻。辰の市を殺して井戸に捨ててしまう。
その後、井戸替えに備えて死体を取り除こうとするが、徳の市とも辰の市とも知れぬ幻覚に惑わされ、孝次郎とお菊は死亡する。果たして盲目の按摩は存在したのだろうか?

[感想] オリジナル? なんとも中途半端で、タイトルの「蚊喰鳥」の意味もわからない。こっそり抜け毛を集めるってのは怖かった。辰の市は復讐を誓うが、なにか計画はあったのだろうか? 辰の市が、徳の市の演技だったとしても、腑に落ちない点が多い。

第4話「雨の古沼」 (中村扇雀) 原作:河竹黙阿彌「小幡怪異雨古沼」

[あらすじ] おつか(岡田茉莉子)は身勝手な亭主に尽くしてきたが、栄達のため売られてしまう。おつかに恩のある役者=小平次(中村扇雀)が座敷牢から救い出すが、追ってきた亭主と揉み合いになり、殺してしまう。小平次は罪の意識に苛まれ、死んだ親方の亡霊を見るようになる。

[感想] これも知らない話。おつかを手に入れるため、べらぼうな手間をかけてきたのに、あっさり殺してしまう計画性のなさに愕然となる。幽霊はお医者様を連れてきただけ。10分くらいでまとまりそうな怪談だった。

第5話「怨霊まだら猫」 (林与一)

[あらすじ] 旅籠で働く娘・お雪は、ヤクザの愛人になることを断ったために殺された。お雪がかわいがっていた猫も三味線にされたが、その旅籠に化け猫が出るようになった。

[感想] 化け猫による報復が見どころだが、いまひとつ盛り上がらない。ストレスが溜まりすぎて、大迫力の報復を期待してしまった。旅籠の主夫婦が乞食になるラストはよかったが、それでもストレス解消にならん。

第6話「累ヶ淵」 (加賀ちかこ) 原作:三遊亭圓朝

[あらすじ] 旗本=深見新左衛門は、金貸しの鍼医=宗悦を斬り殺した。下男=三右衛門が死体を捨てて帰ってくると、新左衛門が刀を振り回したせいで夫婦ともども死んでいた。三右衛門は子どもだった新吉を引き取って、育てた。
新吉は成長し、浄瑠璃の師匠=豊志賀と恋仲になった。義父となった三右衛門は、豊志賀が法悦の娘と知っているため気が気でない。豊志賀の独占欲は日に日に強まり、弟子=お久との仲を邪推する。豊志賀は顔に腫れ物ができて、床に伏せるようになる。看病に疲れた新吉がお久と会っているとき、豊志賀は死亡する。あとには、新吉を恨む手紙が残されていた。
新吉はお久と人生をやり直そうとするが、豊志賀と見誤って殺してしまう。さらに現場を見ていた新五郎と斬り合うことになる。そのさなか、新五郎は新吉が生き別れの弟であることに気づくが、新吉に殺されてしまった。残った新吉も何者かに手によって累ヶ淵に引きずり込まれた。
現場を訪れた三右衛門は、なにが起こったかを察した。

[感想] 人物や事件をカットしているが、「子に受け継がれる因縁」や「血族同士の殺し合い」というテーマは押さえている。三右衛門が累ヶ淵をながめるラストは印象的だった。豊志賀が品位を保ちつつ、年下の新吉と距離を詰めていく描写もよかった。同じ原作から派生した『怪談』(2007)より百倍おもしろかった。

第7話「地獄へつづく甲州路」 (成田三樹夫)

[あらすじ] 甲州路を急ぐ渡世人=政吉(成田三樹夫)は、3年前に斬り捨てた5人の男たちの亡霊につきまとわれていた。気丈な政吉は幻覚に惑わされても意に介さぬが、彼らの干渉はエスカレートしていく。
道中、政吉は女中=おせん(土田早苗)を救ったことから、愛し合うようになる。しかしおせんは、信次郎の妹だった。
いよいよ甲州路を抜ける直前、政吉は幻覚のため人を斬ってしまう。さらに自分の名前をおせんに知られ、仇として討たれる。また政吉を愛したおせんも自刃し果てるのだった。

[感想] このシリーズでいちばん怖かった。信次郎(寺田農)の痩せた顔だけでも迫力あるが、5人並ぶと威圧感がすごい。政吉は亡霊に侘びたり、取引しようとせず、見たら斬りつけるを繰り返す。これが最後の悲劇を生むんだから、よくできてる。政吉がおせんに惚れ、改心する兆しをみせても、亡霊は赦さない。おせんの幸せも認めない。まさに亡霊。怖かった。

第8話「大奥あかずの間」 (勝呂誉)

[あらすじ] 五代将軍綱吉に責め殺されたお雪の霊が、夜毎、あかずの間から夜ごと鼓を打つ。

[感想] 大河ドラマのような語り口。耳慣れない用語、井戸さらい、墓の掘り起こし、お棺運び、女中の手を足で踏んで名前を聞くと夜伽、お手つきで打ち掛けをもらえるなど、大奥の文化は興味深い。
しかし主体的に動くキャラクターがいないため、物語にまったく集中できない。主人公らしきお妙も、盲目で唖の坊主=浦野(浜田ゆう子)も、なにもしない。そもそも将軍はお雪になにをしたのか? どうして生死が判然としないのか?
ラスト、お雪を殺したのは右衛門佐の局(白木万理)だったこと、お妙と浦野が組んでお雪の方の復讐をしていたことがわかるが、まさか謎解きがあるとは思わず面食らった。おまけにお妙と浦野も落雷で死んでしまい、なにがなんだか、唖然とするばかりだった。

第9話「新選組 呪いの血しぶき」 (中村敦夫)

[あらすじ] 新撰組は、土方の専横によって自滅していく。

[感想] 怪談というより史劇。幽霊も出るが、おまけみたいなもの。土方歳三(菅貫太郎)が学生運動の闘士に見える。近藤勇(草薙幸二郎)がボンクラなのも説得力がある。主人公と思しき山南敬助(中村敦夫)はなにもしないまま切腹。わけがわからない。怖いは怖い。だけど、わからない。

第10話「雪おんな/雪女」 (有馬稲子)

[あらすじ] ゆきは気位の高い遊女。その正体は男に捨てられ化生となった雪女。ある日、山で暮らすサムライ=伊十郎と出会い、互いに愛し合うようになる。伊十郎はゆきを身請けしようとするが、名主に娘と結婚して跡を継いでほしいと懇願される。伊十郎が新しい名主にならないと、ならず者たちに村を蹂躙されてしまう。ゆきは身を引き、伊十郎は名主の娘と祝言をあげる。しかしゆきの想いが吹雪となって伊十郎をあの世の雪原に導く。ふたりは覚悟の祝言をあげ、凍りついた。

[感想] お雪の未練が強烈。わざわざお芝居までして伊十郎を拒絶したのに、祝言直前にあの世に呼び寄せ、そこでさらに拒絶するんだから、呆れるやら恐ろしいやら。まぁ、それでもいいと繰り返す伊十郎も伊十郎で、このふたりはどうにもならないと痛感する。小泉八雲の「雪女」の原型を留めておらず、また妖怪や超常現象を出す必然性もないが、おもしろかった。雪山セットの不自然さも、異世界っぽくてよかった。

妄想リメイク(ゆっくり文庫)

それぞれの原著を翻案した動画を作ったので、よかったらどうぞ。



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